[O147-3] 非HIV患者の術後補助化学療法中に生じたPneumocystis Jirovecii Pneumoiaの一例
【背景】非HIV患者におけるPneumocystis Jirovecii Pneumoia(以下PCP)は死亡率が高く、治療法が少ないことでも知られている。その頻度は稀であるものの、薬剤性の免疫抑制時の症例が増加しているとの報告もある。今回我々は乳癌術後補助化学療法に併発した非HIVのPCPの症例を経験したので報告する。【臨床経過】60歳台女性。今回発症以前にも乳癌(Stage1)術後補助化学療法を行った際、肺炎を生じていた。いずれも軽度であり、今回、3回目の化学療法中に呼吸困難を呈した。経過よりPCPが疑われ、当院腫瘍内科へ入院の上で抗菌薬(ST合剤・LVFX)投与、ステロイドパルス(mPSL 1000mg)を投与されていた。しかし呼吸の改善を得られず、呼吸困難を呈し当科緊急紹介となった。 緊急気管挿管の後、集中治療室へ入室とした。CT検査ではびまん性のすりガラス影を認めた。P/F ratio 150の酸素化不良が遷延。PCPを強く疑い、ST合剤を中心とした集学的治療を開始した。後に喀痰PCR検査にてPCPの確定診断に至った。β-Dグルカン値の改善を得たもののP/F ratioの改善を得られず、Day 10よりペンタミジン(PM)を追加投与した。 その後も改善を得られず、Day13のCT followにて間質性肺炎を否定できない所見を認めた。間質性肺炎急性増悪と考え、ステロイドパルス(mPSL 1000mg×3日間)を施行。また気管切開術・CHDF・PMXを併用するも呼吸の改善を得られなかった。治療が奏功せずDay25に死亡退院となった。【結論】非HIV患者における免疫抑制下でのPCPは非常に重篤である。抗菌化学療法はST合剤が第一選択とされ、次いでPMが挙げられる。今回、ST合剤の投与にて一時的に採血・画像検査の改善を得られたが、呼吸の改善を得られなかった。この時点でのPCP治療に関する明確な指針は無く、感染症科との協議の結果、第一選択薬・第二選択薬の同時投与を選択したが奏功しなかった。非HIV患者の免疫抑制下でのPCPは稀ではあるものの近年増加傾向にあるため、若干の文献的考察を交えて報告する。