第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O147] 一般演題・口演147
感染・敗血症 症例08

2019年3月3日(日) 10:05 〜 10:45 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:丹保 亜希仁(旭川医科大学救急医学講座)

[O147-5] 播種性帯状疱疹に合併したウイルス性髄膜炎における二次感染対策の経験

坂本 透1, 多々良 一彰1,2, 後藤 憲志1,2, 渡邊 浩1, 入江 梓3, 菊池 真介3, 谷脇 考恭3 (1.久留米大学 医学部 感染制御学講座, 2.久留米大学 医学部 小児科学講座, 3.久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)

【背景】播種性帯状疱疹は致死的な感染症である。免疫不全患者に発生し空気感染対策を要するが、ICUでの遭遇率の高い疾患ではない。ICU入室後に播種性帯状疱疹によるウイルス性髄膜炎と診断された症例における二次感染対策の経験について報告する。【臨床経過】症例は68歳の男性。関節リウマチ・糖尿病に対し近医にて加療中であり、長期間ステロイドの内服を行っていた。頭痛・意識障害を主訴に前医へ救急搬送されウイルス性髄膜炎の疑いとなり入院加療開始された。前医入院3日目に痙攣発作及び呼吸状態の悪化を認めたため経口気管挿管が行われ、精査加療目的に当院転院・ICU入室となった。当院入院2日目に右腹部に2か所・右側胸部に1か所の水疱を認め、入院3日目に入院時の血液検査にて水痘・帯状疱疹ウイルスIgM 6.73・同IgG>=128と上昇を認めていたことから皮膚科へコンサルテーションを行った。上述の水疱に対しウイルス抗原キット・Tzanck testともに陽性であったことから播種性帯状疱疹に合併したウイルス性髄膜炎が考えられ直ちにICTによる二次感染対策を開始した。本患者は一般病棟転棟・個室管理とし水痘抗体を保持した医療従事者のみの接触を許可した。接触者においては本患者入院時より隔離までの期間に同フロアにいた職員および全患者42名をリストアップした。当院は入職時に全職員に水痘ウイルス抗体検査及び抗体陰性者に対し予防接種を行っているが、看護師2名医師1名が抗体陰性であった。看護師1名に緊急ワクチン接種を行い暴露後72時間を超過していた看護師1名は抗ウイルス薬の予防内服を行った。また基礎疾患によりワクチン接種を行えない医師1名には予防内服を行った。明らかな水痘の既往のある4名を除いた38名の患者に対しては抗ウイルス薬の投与を行い予防接種未施行の乳児2名に対しては免疫グロブリンの投与を併用した。水痘患者接触者は接触後8日目から接触後28日目まで状態観察を行い、曝露者全員の二次感染を認めず感染対策終了を宣言した。なお転院元の医療機関へも情報提供を行い同様の対策が行われ、二次感染者は認めず終息が宣言された。【結論】播種性帯状疱疹は水疱が出現しないこともあるため、診断が難しく鑑別が重要な疾患である。今回は幸いにも発疹の出現を認めたため診断が可能であった。播種性帯状疱疹の発生時には適切な二次感染対策を行うことにより感染拡大を防ぐことが極めて重要である。