第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O148] 一般演題・口演148
感染・敗血症 研究08

2019年3月3日(日) 10:45 〜 11:35 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:吉田 拓生(東京慈恵会医科大学麻酔科学講座集中治療部)

[O148-1] 壊死性軟部組織感染症の検討

栗林 真悠, 瀬尾 龍太郎, 有吉 孝一 (神戸市立医療センター中央市民病院)

【背景】壊死性軟部組織感染症は皮膚や筋肉などの軟部組織の重症感染症である。急速に感染部が拡大し、致死率は起炎菌によっては30-80%と高い、救急集中治療分野で重要な疾患のひとつである。当院の集中治療室における壊死性軟部組織感染症の患者について検討した。【方法】2017年6月から2018年6月の間に、壊死性軟部組織感染症の診断で救急集中治療室へ入室した患者について、後方視的に検討した。【結果】14例が壊死性軟部組織感染症の診断で入室し、うち12例が壊死性筋膜炎、2例はフルニエ壊疽であった。年齢の中央値は72.5(43-91)歳、男性7例、女性7例。背景疾患には、免疫不全状態(ステロイド長期内服、透析、血液疾患)は4例、糖尿病の既往は6例にみられた。LRINEC scoreの中央値は7.4(3-11)であった。外科的治療を希望しなかった1例を除き、13例に入院後24時間以内に外科的介入がなされ、うち6例で四肢切断を要した。全例で血液培養が施行され、血液培養陽性は6例、いずれも単一菌の検出で、Streptococcus pyogenes 2例、Pseudomonas aeruginosaEscherichia coli ESBLなどが1例ずつ検出された。創部培養は11例で行われ、培養陽性は10例、フルニエ壊疽の2例では複数菌が検出された。その内訳はStreptococcus pyogenes3例、Streptococcus equisimilis2例、Staphylococcus aureusPseudomonas aeruginosaなどが1例ずつであった。集中治療室の平均滞在日数は4(1-8)日、当院の平均入院期間は40(2-90)日、退院時の転帰は自宅退院あるいは転院が10例、死亡は4例(死亡率29%)であった。死亡例のうち2例は来院から24時間以内に集中治療室で死亡し、集中治療室退室後の死亡は2例で、外科的治療を希望しなかったものと、内服薬の誤嚥に伴う呼吸不全によるものであった。死亡群と生存群のAPATCHE II scoreの平均は37.75、20.6であった。【考察】壊死性軟部組織感染症では、重症感染症としての早急な感染巣への外科的介入と、適切な抗菌薬治療が重要である。本検討では、やはり重症度が高いほど救命は困難な傾向にあるものの、重症例であっても救命しえた症例は少なからず存在した。いずれも初期蘇生を含め、集学的治療は十分に行われていたと考える。血液培養や創部培養より原因菌が複数検出され、Pseudomonas aeruginosaなど皮膚軟部組織感染症としては稀な起炎菌が判明した症例もあり、感染症治療における培養検査の重要性を再認識した。