[O148-3] 悪性腫瘍関連を示唆される菌種の培養陽性例の検討
【背景】救急集中治療領域では培養検査はきわめてcommonであるが、あらゆる病態の患者検体を取り扱うことから、ときに解釈に注意を要する微生物学的な知識が必要になることがある。例えば一部の菌種で、その菌血症が悪性腫瘍の存在と関連を示唆されるものがあり、Streptococcus bovisやClostridium septicumなどいくつかの菌種が知られているが、血液以外の検体からこれらの菌種が検出された際の臨床的意義についてはほとんど報告がなく明らかになっていない【目的】悪性腫瘍との関連が示唆される細菌が血液検体以外で検出されることの臨床的意義を明らかにすること【方法】京都大学医学部附属病院で2000年から2016年の間にStreptococcus bovis groupが培養陽性となった全検体について診療録ベースで検討した【結果】35例が陽性であり、その内訳は尿が13、胆汁が9、血液が6、腹水が3、生殖器関連が2、皮膚関連が2であった。これらのうち、明確に悪性腫瘍との関連が指摘できるものは、尿が5/13、血液が2/6、胆汁が3/9であった。尿検体陽性例の悪性腫瘍は5例全例が尿路系であり、同時施行された血液培養はすべて陰性であった。また特徴的なものとして、胆汁検体陽性例の3/9が肝移植後患者において見られ、腹水陽性例は腹膜炎や膵炎等の重篤な疾患で見られた。【考察】今回の結果では血液検体陽性例での悪性腫瘍との関連が見られた頻度は既報と同程度であった。以前よりStreptococcus bovis groupの菌血症や髄膜炎を契機として消化器系悪性腫瘍が発見されたという報告がなされており、その侵入門戸は悪性腫瘍による局所構造の破綻であると推測されているが、その詳細なメカニズムはわかっていない。今回の結果から、悪性腫瘍のみならず、腹膜炎や膵炎、肝移植後といった炎症や侵襲後状態が背景疾患として散見され、何らかの侵襲による局所での防御機構の破綻が本菌種の培養陽性の成立に関与していることが考えられた。また興味深いことに、尿検体からStreptococcus bovis groupが検出された場合に、血液検体陽性の場合と同等程度の頻度で尿路系悪性腫瘍との関連が示唆された。過去に同様の報告はなく、今後救急集中治療領域の診療において留意すべき可能性があり、より詳細な検討が期待される。