[O149-3] Rapid Response Systemは、当院の予期せぬ心肺停止を減少させられるか?
【はじめに】予期せぬ院内心肺停止の予防のため、Rapid Response System (RRS)を導入する施設が増加している。当院では2011年から院内急変コード(スタットコール)を運用しているが、RRSは導入していない。本研究では、当院でRRSを導入した場合の、予期せぬ心肺停止に対して見込まれる効果について検討した。【方法】研究デザインは後ろ向き観察研究であり、期間は2014年1月から2017年12月、対象は予期せぬ院内心肺停止(心肺停止に対してスタットコールが起動され、心肺蘇生を施行した)症例とした。入院12時間未満、18歳未満、既にICUに入室している症例は除外した。心肺停止、もしくはその発見の1-12時間前にMET(Medical Emergency Team)/RRT(Rapid Response Team)起動基準(仮に「呼吸数30回/分以上、8回/分以下」、「SpO2<90 %(酸素吸入下)」、「心拍数130回/分以上、40回/分以下」、「血圧90 mmHg以下、普段から40 mmHg以上の低下」、「四肢冷感・冷汗」、「急激な意識の変化」、「何かおかしい」として)を満たした患者の割合から、RRS導入による心肺停止の予防効果について検討した。【結果】対象期間の18歳以上の入院患者数は49,285名、予期せぬ院内心肺停止は16件(0.32件/1,000入院)であった。年齢の中央値は74歳(62.25-83.25)、心肺停止、もしくはその発見の1-12時間前にMET/RRT起動基準を満たしていた患者は8名(50.00%、0.16名/1,000入院)であった。その内、死亡したのは7名(0.14名/1,000入院)であった。【考察】予期せぬ院内心肺停止患者の半数が発症1-12時間前にMET/RRT起動基準を満たしており、RRSの導入により心肺停止前に介入出来た可能性がある。また、その全てで心肺停止を予防出来たとすると、0.14名/1,000入院の心肺停止を回避できると考えられる。しかし、本研究での予期せぬ院内心肺停止が先行研究の10分の1程度であり、今後さらなる調査が必要である。また、今回は予期せぬ院内心肺停止に焦点を当てており、予期せぬICU入室の予防等に対してどの程度の効果が見込めるかについても、今後検討する必要がある。【結語】当院でRRSを導入した場合、予期せぬ院内心肺停止の50%、0.16件/1000入院に対して心肺停止前に介入でき、0.14名/1,000入院の心肺停止を回避できる可能性がある。