第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

ショック

[O15] 一般演題・口演15
ショック03

Fri. Mar 1, 2019 5:55 PM - 6:45 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:高澤 知規(群馬大学医学部附属病院集中治療部)

[O15-6] 右心不全を合併した敗血症性ショックにIABPと高インスリン血症・正常血糖療法併用が著効した1例

大野 博司 (洛和会音羽病院ICU/CCU)

 高用量血管作動薬に反応しない難治性ショックの場合、死亡率は94%と非常に高いことがわかっている。 難治性敗血症性ショックでの末梢血管拡張性ショックに対する対応として、コルチコステロイド、バソプレシン、NO阻害薬(メチレンブルー)がオプションとしてある。また心機能低下すなわち敗血症性心筋症を合併し強心薬(ドブタミン、ミルリノン)に反応しない場合の対応として、GIK療法、低温管理、電解質・アシドーシス補正、大量置換液による持続血液濾過、体外循環-VA-ECMOがある。 GIK療法は以前より心臓血管外科術後低心機能に用いられており心機能・心係数改善効果が報告されている。さらにGIK療法以上に大量インスリンを用いたHIE(Hyperinsulin-euglycemia)療法はカルシウム拮抗薬、β遮断薬中毒による循環不全の治療に用いられている。 インスリンには心筋細胞でのグルコース取り込み、エネルギー基質利用能の促進による心機能改善効果によって心機能・心係数改善をもたらすと考えられている。 敗血症性心筋症に対してHIE療法のエビデンスは存在しない。今回、慢性心不全、虚血性心疾患の既往があり重症肺炎・敗血症性ショック発症により敗血症性心筋症および急性右心不全から急激に循環不全となったケースに大動脈バルーンパンピング(IABP)およびHIE療法を併用し著効した症例とともに敗血症性ショックへのHIE療法について文献的考察を含めて報告する。 症例は冠動脈バイパス術、慢性心不全の既往がある75歳男性。前日からの感冒様症状、当日になり意識障害ありER救急搬送。重症肺炎・敗血症性ショックによる血圧低下、低血糖でICU入院加療。挿管時に心肺停止となり2分でROSC。入室後に輸液負荷、血管収縮薬、強心薬に反応しない難治性ショック、急性腎傷害AKIで人工呼吸器・CRRT管理施行。抗菌薬、大量強心薬・血管収縮薬、ステロイド投与および電解質異常補正するも心係数CI<2.0、MAP50~60台であり虚血性心疾患に敗血症性心筋症合併による心原性ショックが病態のメインと考えられた。そのため緊急CAG施行し新規病変ないことを確認しIABP留置を行うも、CI、MAPともに改善なくHIE療法導入とした。HIE療法開始数時間でCI上昇が認められ循環動態が安定した。強心薬に反応しない敗血症性心筋症では一般的にVA-ECMO導入となるが、IABPとHIE療法併用は敗血症性ショックで右心不全を合併した難治性敗血症性心筋症に有効である可能性がある。