第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 研究

[O154] 一般演題・口演154
呼吸 研究06

2019年3月3日(日) 09:35 〜 10:25 第15会場 (国立京都国際会館1F Room H)

座長:石橋 一馬(神戸市立医療センター中央市民病院)

[O154-3] High Flow Nasal Cannula Therapy(HFNCT)におけるCO2洗い出し効果およびPEEP様効果の基礎実験

武藏 健裕, 井上 翠, 矢田辺 隆, 原子 成也 (広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科)

【はじめに】HFNCTは30~60L/minの高流量を送ることにより,CO2洗い出し効果やPEEP様効果があるとされている.これらの効果は設定流量や患者の開口状態によって影響を受けることが考えられる.そのため,自発呼吸モデル肺を作成し基礎実験にて検討した.
【方法】TTLモデル肺の左右の肺を固定し,片肺に人工呼吸器を接続し換気を行うことで,両肺が同時に動く自発呼吸モデル肺を作成した.
PEEP様効果:モデル肺にYピースを接続し,Yピースの片方を模擬口,もう片方を模擬鼻とし鼻カニューレを装着した.模擬口は開口率が0,5,10,15,20,40,60,80,100%となるように穴を空けた.HFNCTの流量は30,40,50,60L/minに設定した.自発呼吸模擬用人工呼吸器は最高圧10cmH2O,PEEP0cmH2O,呼吸数15回,I:E比1:1,一回換気量500mL/minと設定した.圧力計にてモデル肺内の圧力を測定しPEEP様圧とした.
CO2洗い出し効果:上記実験回路のYピース部分へ模擬気道,模擬鼻部分へ模擬鼻腔を追加した.人工呼吸器の設定変更は一回換気量470 ml,I:E 比1:2とした.カプノメータをモデル肺と模擬気道の間に接続し,初期状態の自発呼吸時にモデル肺出口のCO2分圧(以下,PETCO2)が40 mmHgとなるように,モデル肺内への炭酸ガス流量を30 ml/minに調節した.
【結果】設定流量30L/minでの開口率0,5,10,15,20,40,60,80,100%におけるPEEP様圧は順に8.03,3.27,1.90,1.45,0.86,0.40,0.35,0.20,0.20cmH2Oを示した.設定流量40,50,60L/minにおいても同様の結果を示した.開口率80,100%を除く全ての条件にて,開口率の増加に伴いPEEP様圧が有意に低値を示した.また開口率10%以上ではPEEP様圧が大きく低下した.CO2洗い出し効果については,開口率5%における設定流量30,40,50,60L/min時のPETCO2は順に28.0,27.0,26.2,26.0mmHgを示し,設定流量が増加するとともにPETCO2は有意に低下した(約7%).また設定流量が高値の場合には,開口率5%からCO2の大きな低下を認め,開口率増加に伴う有意な低下は認められなかった.
【まとめ】CO2洗い出し効果を得るためには,高流量設定(40L/min以上)にするか,低流量設定(30L/min)の場合には小さな開口に留める必要がある.しかし,小さな開口でもPEEP様圧は低値を示し,PEEP様効果は得られにくいことが示唆された.治療時には設定流量や開口状態などを確認する必要性が再確認された.