[O154-6] 経鼻高流量酸素療法における設定FIO2と設定流量が肺胞内酸素濃度に与える影響
【背景】High Flow Nasal Cannula(HFNC)を用いた経鼻高流量酸素療法において設定されたFIO2は比較的正確に患者へ供給されるとの報告がある。しかし、臨床で用いられる流量は20から60L/minと幅広く、設定流量が患者の実際の肺胞内酸素濃度に大きく影響することが推測される。【目的】HFNCの設定FIO2と設定流量の違いが肺胞内酸素濃度に与える影響を検討する。【方法】対象は健常成人男性2名、高流量ブレンダはOA 2060(サンユーテクノロジー)、インターフェースはOptiflow:M size(Fisher & Paykel)、経皮的血液ガスモニタはTCM 5(RADIOMETER)を使用した。被検者は開口し、口呼吸の状態でHFNCを装着し、Electrical Impedance Tomography(EIT)Pulmo Vista 500(Draeger)と人工呼吸器Infinity V500(Draeger)を用いて、EITのImpedance変化を目安に一定の自発呼吸となるようにした。HFNCのFIO2を0.21-0.5-1.0と変えそれぞれ10分観察し、各フェーズ終わりにtcPO2とtcPCO2を記録した。HFNCの設定流量は20L/minと50L/minの2種類を試した。【結果】HFNC中の被験者AとBの一回換気量は中央値〔IQR〕でA:564ml〔613-519〕、B:599ml〔640-557〕、呼吸数はAとBともに16/minであり、ほぼ一定であった。FIO2 0.21の時のtcPO2とtcPCO2の値から呼吸商を0.8としA-aDO2を計算した結果、設定流量20と50L/minで、Aは21と30〈mmHg〉、Bは28と15であった。FIO2を0.21-0.5-1.0と変えたときのtcPO2は、設定流量20と50L/minで、Aは90-128-212〈mmHg〉と87-140-304、Bは76-126-278と78-152-396となった。推定される肺胞内酸素分画(FAO2)をtcPO2、tcPCO2、A-aDO2の値から計算した結果、設定流量20と50L/minで、Aは0.21-0.26-0.37と0.21-0.28-0.51、Bは0.21-0.28-0.49と0.21-0.29-0.63となった。【考察】設定流量20 L/minと50L/minでA-aDO2の著変はなく、本研究ではHFNCによって生じたPEEPの影響は無視しうる程度と考えられた。tcPO2の変化は設定流量の違いによるもので、供給ガスの希釈の割合が異なるためである。設定流量50L/minでも希釈の影響を受け、吸気ガスの酸素濃度は低下していることが示された。【結語】経鼻高流量酸素療法では希釈の影響により設定FIO2より低い酸素濃度のガスが肺胞内に供給されていることが示唆された。設定FIO2で計算されたP/F比では患者の酸素化能を過小評価してしまう危険性がある。