第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

呼吸 研究

[O155] 一般演題・口演155
呼吸 研究07

2019年3月3日(日) 10:25 〜 11:15 第15会場 (国立京都国際会館1F Room H)

座長:後藤 由香里(東京医科歯科大学医学部附属病院)

[O155-6] 経口挿管中の患者の口渇に関する実態調査

堀越 さお織, 荒井 由紀, 山口 庸子, 内野 滋彦, 宮城 久仁子, 瀧浪 將典 (東京慈恵会医科大学附属病院 看護部 ICU)

【背景】近年、口渇は挿管患者の苦痛の上位に挙げられ、注目されている。12時間以上人工呼吸管理を受けたICU入室患者のストレスの実態と関連要因を後ろ向きに調査した先行研究では、8割近くが「口渇」を中程度~非常に強い主観的ストレスとして経験していた。しかし、口渇は主観であり評価が難しく、口渇の評価方法や効果的なケア方法に関しては未だに確立されたものがなく、挿管中の患者を対象とした研究はない。また、口腔内が潤っているのに主観的な口渇を訴える患者もいるが、口渇と口腔内乾燥の関連性についても明らかとなっていない。【目的】ICUにおける経口挿管患者の口渇の実態を明らかにし、効果的なケアを検討すること。また、口渇と口腔内乾燥の関係性を検討すること。【方法】対象は2018年6月1日~8月31日に経口挿管で人工呼吸管理を受けたRASS-2~+1の成人患者(18歳以上)。口腔ケア介入前後、口渇の訴えがあった時のケア介入前後に、口腔内乾燥を口腔アセスメントガイド(Oral Assessment Guide、以下OAG)を用いて客観的に、喉の乾きの有り無しを主観的に評価し、その変化を記録した。評価アウトカムは口渇の発生頻度、口渇と口腔内乾燥の関連、ケア介入の有効性とした。【結果】観察期間中に経口挿管で人工呼吸管理を受けた成人患者は105名、そのうち39名が対象となった。患者背景は男性が69%、平均年齢は69歳、挿管期間の平均は1.4日であった。39名のうち、一度でも口渇を訴えた患者は20名で、残りの19名はせん妄や意識障害、深鎮静後すぐに抜管した、挿管期間が短い等の理由で評価されなかった。OAGにより口腔内が乾燥していると判断された患者の約95%には口渇の訴えがあったが、口腔内が湿潤している時にも約88%は口渇の訴えがあった。口渇の訴えに対し最も多いケア内容は氷水を用いたスワブでの保湿であり、介入前後での口渇の改善率は氷水64%、冷水60%、常温33%であった。しかし、ケア介入時に喉の渇きの評価が行われた回数に差があり、ケア内容による口渇の改善率に有意差はなかった。【結論】口渇の有無が記録された患者のほとんどに口渇が認められ、客観的な口腔内湿潤の程度の評価と主観的な口渇の有無には関連が認められなかった。ケア介入により主観的な口渇は改善したが、ケア方法についての検討は困難であった。しかし、温度の低い水の使用の有用性は示唆された。