第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

臓器移植

[O157] 一般演題・口演157
臓器移植

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:35 第16会場 (国立京都国際会館2F Room I)

座長:美馬 裕之(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科)

[O157-3] 血液培養陽性でも臓器提供ができる可能性のあった溺水症例の一例

北井 勇也, 喜久山 紘太, 穂積 拓考, 定本 圭弘, 高橋 公子, 北原 佑介, 福井 英人, 那須 道高, 仲村 志芳, 米盛 輝武 (社会医療法人 仁愛会 浦添総合病院)

【背景】臓器提供目的の患者管理で難渋する点として、感染症の認識・抗菌薬治療戦略があげられる。ドナー適応基準の一つに「全身性の活動性感染症がない」ことがあり、血液培養陽性症例は適応外となることがある。日本臓器移植ネットワークが提示するガイドラインの「ドナー管理目標」には感染管理や血液培養陽性時の対応についての言及はないが、他国のガイドラインや過去の報告では、48時間以上の抗菌薬投与やその後の血液培養陰性などを条件に移植可否を判断している。
【臨床経過】19歳男性、海で遊泳中に溺水し心肺停止となった。CPR開始まで約20分、自己心拍再開までは約50分であった。集中治療管理を行い、海水誤嚥に対してアンピシリン・スルバクタム(1.5g 1日3回)を開始した。自発呼吸と一部の脳幹反射はあったがミオクローヌスが出現していた。第3病日に鎮静薬を中止したが自発呼吸とほとんどの脳幹反射、ミオクローヌスも消失していた。抗菌薬はピペラシリン・タゾバクタム(2.25g 1日4回)へ変更した。第4病日に「脳死とされうる状態」と診断し、家族に臓器提供のオプション提示を行った。肺炎予防目的に連日気管支鏡を行うも痰はほぼ認めなかった。第9, 10病日に発熱したが感染源は同定できず、両日とも血液培養陰性であった。第11病日に肺炎に対する抗菌薬治療を終了した。第13病日にプロカルシトニンの上昇、CTで気管支肺炎、誤嚥性肺炎が疑われた。第14病日に脳死下臓器提供の承諾を得たが、血圧低下したため昇圧剤開始し、メロペネム(1g 1日2回)、バンコマイシン(初回1g、以降500mg 1日1回)、ミカファンギン(150mg 1日1回)の投与を行った。その後も高容量の昇圧剤、輸血を繰り返すも状態改善せず、第17病日に死亡となった。心停止後に角膜摘出を行ったが、第14病日の血液培養からKlebsiella pneumoniae(陽性まで88時間)が検出され移植には至らなかった。
【結論】感染症を疑う所見が得られた時点で速やかに抗菌薬治療を開始し、陰性化確認のための血液培養採取を義務化すること、臓器提供が行われるまで抗菌薬投与を継続するなどの対応で臓器提供ができる可能性を高めることができることが示唆される。