[O157-5] 臓器提供における集中治療医の重要性-スペインでの臓器提供体制視察から-
【背景】平成29年の世論調査では自分自身が脳死と判定された場合臓器提供を希望する人は41.8%であった。一方、本邦で臓器提供が可能な患者は年間2000例ほどと推定されているが、2017年に行われた臓器提供は111例とその5%程度でしかない。これは一般市民の思いを臓器提供につなげることが出来ていない医療システムの問題であると考えらえる。【目的】移植先進国スペインにおける臓器提供体制の視察から、集中治療医の臓器提供へのかかわりいついて報告する。【方法】1.大学臓器提供科(バルセロナ大学臓器提供科)ですすめるスペインにおける臓器提供の教育体制を視察した。2.大学病院臓器提供部門(Hospital Clinic臓器提供部門)の体制を視察した。3.カタルーニャ州の地域オフィス(OCATT)を視察した。4.スペインの中でも臓器提供体制整備が遅れている地域(Girona県)におけるシステム構築を視察した。【結果】1.集中治療医になるプログラムには臓器移植に関する教育プログラムが含まれていた。2.大学病院臓器提供部門の責任者はICUの責任者が兼任していた。臓器提供患者はICU内にいることがほとんどであるため、ICUと密に連携し活動していた。3.地域オフィスは直接あっせんには関わらず、地域の待機患者のリストを管理し、提供者とのマッチング、臓器搬送のコーディネート、管轄下病院における臓器提供部門の質の管理を行っていた。臓器提供病院には臓器提供部門の存在が必須であり、臓器提供部門は集中治療のスペシャリストである必要があった。4.地域の中核病院に3年前から臓器提供部門を立ち上げた医師に話を聞いた。彼女は集中治療医であった。臓器提供の実績を増やすとともに、患者の終末期に丁寧に対応するため院内からは患者の看取りの質が改善したと評価されていた。【考察】スペインの臓器提供には集中治療医が深く関わっていた。臓器提供者は集中治療室にいる事が多く、臓器保護を念頭に置いた管理が必要であるため、集中治療医が果たす役割は大きい。また、患者の終末期に主治医とは別のチームとして介入し、看取りの質の改善にも寄与していた。【結論】集中治療医が臓器提供に関する知識を持ち患者管理に関与することで、患者の意思に沿い臓器提供を選択することが可能になる。救急・集中治療における終末期医療の質を改善し移植医療にも貢献する体制を整備するには、集中治療医の関わりが不可欠である。