第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

補助循環 研究

[O158] 一般演題・口演158
補助循環 研究03

2019年3月3日(日) 09:35 〜 10:35 第16会場 (国立京都国際会館2F Room I)

座長:森實 雅司(済生会支部神奈川県済生会横浜市東部病院臨床工学部)

[O158-1] VA-ECMO管理を要した成人心肺停止患者における乳酸動態と予後との関連についての検討

内田 雅俊1,3, 富田 静香1, 菊地 研5, 永田 功3, 阿部 智一2,4, 田宮 菜奈子4, 小野 一之1 (1.獨協医科大学救急医学講座, 2.順天堂大学総合診療科, 3.筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻, 4.筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野, 5.獨協医科大学病院 心臓・血管内科)

【背景】
血清乳酸値は敗血症や心肺停止蘇生後患者といった重症患者における予後因子であり、その値だけでなく、変化も予後との関連が報告されている。しかし、VA-ECMO(veno-arterial membranous oxygenation)管理を要した心肺停止患者において、乳酸値の変化と予後との関連は明らかではない。
【目的】
本研究はVA-ECMO管理を要した成人心肺停止患者を対象として、VA-ECMO開始後24時間の乳酸値の変化と予後との関連について調査することを目的とした。
【方法】2012年1月~2018年3月に獨協医科大学病院にてVA-ECMO管理を要した18歳以上の心肺停止患者について後方視的研究を行った。VA-ECMO開始後24時間以内に死亡した患者、乳酸値の情報が不明だった患者を除外した。乳酸値 ≧ 2 mmol/Lを高乳酸血症とした。退院時CPC(Cerebral Performance Category) 1、2を神経学的予後良好とした。ICU入室時乳酸値、ECMO開始後6時間以内、6-12時間後、12-24時間後の乳酸値正常化の有無と予後との関係を解析した。
【結果】
観察期間内に134例の成人心停止患者にVA-ECMO管理が行われ、68例が分析対象となった。年齢の中央値は64.5歳、51例 (75%)が男性だった。院内心肺停止が47例(69.1%)であり、35例 (51.5%)で初期波形がShockable rhythmだった。ICU入室時乳酸値の中央値は7.15mmol/Lであり、65例 (95.6%)がICU入室時に高乳酸血症を呈していた。26例 (38.2%)が生存退院し、19例 (27.9%)が退院時神経学的予後良好だった。ICU入室時乳酸値の中央値は生存群、神経学的予後良好群において低値だった。(生存群:6.05mmol/L vs. 死亡群:8.25mmol/L、神経学的予後良好群:5.60mmol/L vs. 神経学的予後不良群:8.50mmol/L)。ICU入室時に高乳酸血症を呈していた65例のうち、4例 (6.2%)はVA-ECMO開始後6時間以内に、7例 (10.8%)は6-12時間後に、16例 (24.6%)は12-24時間後に乳酸値が正常化したが、38例 (58.4%)は24時間以内に正常化しなかった。それぞれの退院時神経学的予後良好患者の割合は、6時間以内:4/4例 (100%)、6-12時間後:1/7例(14.3%)、12-24時間後:6/16(37.5%)、非正常化:6/38例 (15.8%)だった。
【結論】
VA-ECMO管理を要した成人心肺停止患者において、ICU入室時の乳酸値が低いこと、ECMO管理開始後早期に乳酸が正常化することは良好な予後と関連している可能性がある。