第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

精神・心理

[O159] 一般演題・口演159
精神・心理

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第16会場 (国立京都国際会館2F Room I)

座長:安宅 一晃(奈良県総合医療センター集中治療部)

[O159-4] 言語の異なる外国人患者に用いて分かったICU diaryの新たな側面

加藤 唯記1, 村松 恵多1, 河合 佑亮1, 栗山 直英2, 原 嘉孝2, 中村 智之2, 山下 千鶴2, 柴田 純平2, 幸村 英文2, 西田 修2 (1.藤田医科大学病院 看護部, 2.藤田医科大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

【はじめに】ICU Diaryは、鎮静による記憶の欠落や歪みを補い、再構築することでpost intensive care syndrome(PICS)を予防する可能性が示唆されている。記憶の再構築には、患者が状況を理解することが不可欠だが、異なる言語を用いる外国人患者に対して十分な説明を行うことは難しい。今回、ICUに入室した外国人患者とその家族に対して、ICU Diaryを用いた情報共有により、医療者・患者・家族間の関係性構築が可能となった症例を経験したので報告する。【症例】60歳代女性 患者は母国語のみ理解可能であり、家族は日本語と母国語の理解が可能であった。日本在住の長男夫妻のもとへ訪問中に呼吸困難感を認め、間質性肺炎急性増悪の診断で当院に緊急搬送された。ICU入室後、家族の代理意思によりVV ECMOが導入された。入室2日目に気管切開され、鎮静剤の漸減を行いawake ECMOとなった。医療者は、翻訳機や簡易的な母国語の文字盤を使用したコミュニケーションを試みたが、双方の一方的な伝達のみで、患者の治療に対する理解を把握できなかった。また、患者も治療の必要性を理解できず、不安を訴え、家族の付き添いを希望した。さらに疲労感を理由にリハビリも拒否するようになった。そこで我々は、面会時間外の患者の様子や治療内容、その目的を患者や家族と共有するためにICU Diaryを開始した。ICU Diaryに記載された内容を家族が母国語に翻訳して患者と共有する中で、患者と家族の治療に対する理解が深まった。医療者は、ICU Diaryに記載された家族のその時の思いや患者への励ましの言葉を見ることで、家族の思いを理解していった。ICU Diaryを記載するほどに患者・家族・医療者のコミュニケーションが増えていった。そして「家に帰りたい」などの患者の思いも記載されるようになった。医療者は、患者の「家に帰りたい」という思いを起点に、不安を訴える患者が安心してリハビリを行えるように面会時間を調整し、多職種と家族で協働した。次第に患者は、リハビリに対して積極的になり、入室19日目に「リハビリをもっと頑張りたい」と発言されるようになった。【まとめ】異なる言語を用いる患者に対してICU Diaryを用いたコミュニケーションを図った。家族と協力したICU Diaryの活用は、医療者・患者・家族間を結ぶ効果的な架け橋となりうる。