[O159-6] 高用量のダントロレン投与を行った重症悪性症候群の1症例
【症例】47歳男性。うつ病が既往にあり向精神薬の処方を受けていたが自己中断していた。今回救急搬送となる8日前に意識障害を主訴に当院を受診し,睡眠薬、アルコール摂取による脱水と診断し5日間入院し自宅退院した。入院中は向精神薬を内服させていたが,退院後は再び自己中断した。退院4日後に倒れているところを発見され救急要請となった。来院時患者は脱水状態であり,また発熱,筋強剛が認められた。救急外来での迅速検査施行中も著明な発汗,頻脈,頻呼吸,筋強剛が継続しており,また採血検査ではCK6882U/Lと横紋筋融解症が認められた。向精神薬の急激な内服と怠薬のエピソード,交感神経症状と横紋筋融解症などの臨床症状から悪性症候群と診断し,ICUに入室した。入院後ダントロレンとブロモクリプチン,ミダゾラム(その後ロラゼパムに変更)の投与を開始した。初日よりダントロレン80mg/日を連日静注した。CKは第2病日に130972U/Lまで上昇し以降順調に低下したが,発熱と筋強剛が治まらず第4病日に添付文書上の最大量である200mg/日に増量した。その後発汗や頻脈などの交感神経症状に関しては改善がみられたが,筋強剛はさらに増悪し,発熱も続いていた。増悪する臨床症状に対して,薬理学上最も効果があると考えられるダントロレンを増量し対応する方針とし第6病日よりダントロレン240mg/日に増量,それでも筋強剛、発熱が改善しなかったためさらに文献的に使用が推奨されている最大量の480mg/日の投与を行い、筋強剛、発熱の改善が認められた。その後症状改善に伴いダントロレンは内服に移行し、第18病日にICUを退出した。【結語】治療に難渋した悪性症候群の一例を経験した。臨床症状の改善が得られない重症の悪性症候群に対しては,高用量のダントロレン投与を考慮してもよいと思われた。