第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O16] 一般演題・口演16
鎮痛・鎮静・せん妄01

2019年3月1日(金) 09:00 〜 10:00 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:林下 浩士(大阪市立総合医療センター 救命救急センター・集中治療センター)

[O16-4] 重症患者における血漿中オレキシン濃度と急性脳機能障害との関連

大藤 純, 上野 義豊, 中西 信人, 高島 拓也, 板垣 大雅 (徳島大学病院 救急集中治療部)

【背景】重症患者では、せん妄や昏睡などの急性脳障害を発症し、長期の認知機能予後や生命予後の悪化にも関連する。オレキシンは、視床下部外側野の神経細胞で産生される神経ペプチドであり、正常な覚醒状態の維持、情動の制御、交感神経系の活性化などと関連する。敗血症や中枢神経系の炎症性疾患の急性期では、オレキシン活性が低下し、急性脳機能障害との関連を示唆する報告もある。今回、重症患者の急性脳障害と血漿中オレキシン濃度との関連を調査した。【方法】当院ICUに24時間以上在室した18歳以上の成人患者を対象とした。ICU入室後より最大7日間まで、1日1回、6:00~21:00の時間に採血し、血漿中オレキシンA濃度を測定した。オレキシンA測定はELISA法(Orexin A EIA kit, Phoenix Pharmaceuticals、Inc.)で行った。急性脳機能障害として、せん妄の有無をConfusion Assessment Methods for the ICU (CAM-ICU)を用いて2~3時間毎に評価し、Richmond Agitation Sedation Scale (RASS) -4および-5を昏睡と定義した。鎮痛・鎮静薬の使用は、担当医の判断で行った。血漿中オレキシンA濃度測定時における、せん妄または昏睡の有無により、せん妄群、昏睡群、正常群にグループ分けし、それぞれの血漿中オレキシンA濃度を比較した。【結果】64例の患者を対象とし、176検体を解析した。血漿中オレキシンA濃度測定時、せん妄は30.1%(n=53)、昏睡は29.5%(n=52)で認めた。42例(65.6%)で鎮痛または鎮静薬を使用していた。血漿中オレキシンA濃度は、正常群において、せん妄群、昏睡群と比較して有意に高かった [中央値(第1,第3四分位)、正常群: 31.0 (22.0, 49.3) pg/mL, せん妄群: 23.1 (14.2, 33.3) pg/mL, 昏睡群: 22.6 (12.8, 32.8) pg/mL, p=.003]. 【結語】重症患者において、せん妄や昏睡など急性脳機能障害を呈する場合には、血漿中オレキシンA濃度の低下を認めた。ただし、鎮痛・鎮静薬使用症例も多く、薬物による一過性の脳機能低下やオレキシン分泌への影響も否定できない。急性病態による脳機能障害と血漿中オレキシン濃度との関連を証明するには、更なる検証が必要である。