第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O16] 一般演題・口演16
鎮痛・鎮静・せん妄01

2019年3月1日(金) 09:00 〜 10:00 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:林下 浩士(大阪市立総合医療センター 救命救急センター・集中治療センター)

[O16-7] 高齢者に対する処置時の鎮静・鎮痛:多施設前向き観察研究

金 成浩1,2, 乗井 達守3, 永田 慎平2, 清水 宏康4, 高瀬 啓至5, 下里 アキヒカリ6, 本間 洋輔4 (1.大阪はびきの医療センター 集中治療科, 2.大阪警察病院 ER・救命救急科, 3.ニューメキシコ大学病院救急部, 4.東京ベイ浦安市川医療センター救急集中治療科, 5.獨協医科大学病院 総合診療科, 6.健和会大手町病院 麻酔科)

【背景】非麻酔科医による処置時の鎮静・鎮痛は,本邦においても広く行われている.欧米では安全性に関する報告がいくつかある一方,本邦からの報告はない.特に高齢者における安全性は明らかではない.【目的】高齢者に対する処置時の鎮静・鎮痛における有害事象の頻度を明らかにする.高齢者では非高齢者と比較して有害事象の頻度が高いと仮定した.【方法】本研究は多施設前向き観察研究であり,参加した4施設は救急科専門領域プログラムのある教育病院である.対象は2017年5月から2018年8月の間に救急受診し,処置時の鎮静・鎮痛を行った患者とした.気管挿管症例は除外した.年齢,性別,ASA PHYSICAL STATUS CLASSIFICATION (ASA分類),処置内容,使用薬剤,有害事象を抽出した.有害事象は,心停止,無呼吸,低酸素血症(SpO2 < 90%), 嘔吐や血圧低下などとした.主要評価項目は,有害事象の頻度とした.また,高齢者(65歳以上)と非高齢者両群での有害事象の頻度を比較した.Fisherの正確確率検定を用いてp < 0.05を有意とした. 【結果】対象患者は402例であった.年齢の中央値は68歳(IQR, 46-78歳),男性が229例(57.0%), 高齢者が231例(57.5%)であった.ASA分類は,ASA1が23.1%, ASA2が51.2%, ASA3または4が25.4%であった.処置はカルディオバージョン(191例,47.5%)が最も多く,次いで脱臼骨折の整復(60例, 15.0%)であった.最も使用された鎮静剤はチオペンタール(160例,39.8%)で, 次いでミダゾラム(121例,30.1%)であった.最も使用された鎮痛剤は,ペンタゾシン(39例,9.7%)で,次いでフェンタニル(25例,6.2%)であった.81例(20.1%)に有害事象を認め,最も多い有害事象は一過性の低酸素血症(39例, 9.7%),次いで無呼吸(25例,6.2%)であった.高齢者では,非高齢者と比較して有害事象が多い傾向にあった.(n=58, 25.0% vs n=23,13.6%; p < 0.01)【結論】本研究では,処置時の鎮静・鎮痛により20.1%で有害事象が発生し,高齢者では非高齢者と比較して有害事象の頻度が高かった.