第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O163] 一般演題・口演163
新生児・小児 症例03

2019年3月3日(日) 10:55 〜 11:35 第17会場 (国立京都国際会館2F Room J)

座長:大崎 真樹(静岡県立こども病院 循環器集中治療科)

[O163-3] Yersinia pseudotubeculosis感染により急性腎障害をきたし持続的腎代替療法を要した一例

余湖 直紀, 高木 祐吾, 河野 里奈, 武藤 雄一郎, 平井 克樹 (熊本赤十字病院 小児科)

【緒言】Yersinia pseudotubeculosis (Y. pstb)感染症は,小児の胃腸炎の起炎菌として重要である.胃腸炎症状以外にも多彩な症状を呈し,急性腎障害(acute kidney injury: AKI)をきたすことがある.今回われわれはAKIをきたし持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy: CRRT)を要した一例を経験したので報告する.【症例】3歳男児. [主訴] 血便[既往歴] 特記事項なし[現病歴] 来院5日前より発熱,1日5-6回の下痢が出現し,来院前日に前医を受診した.活気なく,WBC 18500 /μL,CRP 10.9 mg/dLと高値であった.細菌性腸炎疑いでCTRXを投与され帰宅したものの,翌日の診察で症状改善なく血便を認めたため,当院紹介受診となった. [来院後経過] 活気なく,体温40.8 ℃,心拍数150 bpmと発熱,頻脈があり,腹部全体に圧痛があった.腹部超音波検査で,腸管壁の肥厚はなく,腸液の貯留が目立ち,両側腎の輝度上昇を認めた.輸液とCTRX投与で加療を開始したが,発熱は持続し,WBC 22140 /μL,CRP 25.6 mg/dLとなったためMEPMに変更した.下痢が多く,正確な尿量が評価できずCre 2.5 mg/dL,BUN 34.4 mg/dLと腎機能が悪化したため,入院3日目にPICU入室とした.気管挿管を行い,動脈圧ライン,尿道カテーテルを留置するなどして,正確なモニタリングを開始した.無尿のため溢水となり代謝性アシドーシスを認めたため,入院5日目にCRRTを開始した.入院6日目には解熱し尿量が増加し始め,入院7日目にCRRTを中止とした.CRRTの再導入を要することなく経過したため,入院9日目に人工呼吸器を離脱した.入院日11日目にPICUを退室し,入院18日目に自宅退院とした.東京農工大学に依頼していた血清抗体価測定の結果,Y. pstb感染の確定診断となった. [考察] Y. pstb感染症の主病態は胃腸炎症状である.通常自然治癒するため治療は対症療法であるが,合併症として本症例のようにAKIを呈することがある.AKI症例では約1割に透析を要するとの報告がある.急性期に診断することは困難であり,診断およびAKI合併時の透析導入含め治療に関する文献的考察を加え報告する.