[O17-1] 持続濾過透析中に後腹膜出血を来したレジオネラ肺炎の症例
横紋筋融解を伴うレジオネラ肺炎で腸腰筋出血を発症した症例を経験したので報告する。【症例】56才の男性。特記する既往歴なし。【現病歴】入院10日前に温泉施設を利用し、入院3日前からから感冒症状が出現した。徐々に症状が悪化し、入院日の昼ごろ自宅トイレで動けず呂律が回らなくなったため当院へ救急搬送された。併せて40℃の発熱、筋肉痛、下痢の症状がみられた。白血球数 18890/μl、CRP 27.9mg/dlと炎症反応が上昇し、胸部CTで肺炎と診断され内科に入院となった。【経過】当初尿中レジオネラ抗原は陰性であったが、温泉の利用や上記症状とCPK 5803IU/lを伴う肺炎であったため、レジオネラ肺炎を疑い保健所へ痰を提出したところ、レジオネラPCRで陽性と判断された。翌日にはCPK 103950IU/l、ミオグロビン109146ng/mlと高値になり、無尿となったため当科へ紹介され、ICUへ入室し持続血液濾過透析(以下CHDF)を開始した。ミオグロビンによるフィルターのつまりを予防するためヘパリンナトリウム12.5U/kg/hrとパルナパリンナトリウム6U/kg/hrを併用して行った。翌朝ミオグロビンが29772ng/dlまで低下し、Hbは12.4g/dlであった。CHDFを継続していたところ、悪寒と腰痛を訴えたため午後にアセトアミノフェンを投与した。投与後尿流出がなくなり、さらに翌朝には不穏行動がみられたためブプレノルフィンを投与した。その後まもなく心停止・呼吸停止に至り、蘇生を試みたが反応せず死亡を確認した。蘇生中のHbは6.8g/dlと低下していた。死亡確認後、家族の了承を得て病理解剖を実施した。解剖では後腹膜腔に大量の血液がみられ両側腸腰筋の出血も認められた。死亡原因は腸腰筋からの出血によるものと推定した。病理解剖後、患者の肺と腸腰筋の一部を保健所へ提出し、国立衛生研究所に送られた。研究所での検査により肺と腸腰筋からPCR法によりレジオネラ菌が検出されたと報告があった。【結論】レジオネラ肺炎では横紋筋融解の合併が報告されているがその機序は明らかになっていない。病理解剖と検査結果から腸腰筋内に出血が起こり、CHDFに使用していた抗凝固薬のため出血が助長したと考えた。腸腰筋の出血はレジオネラ菌の直接浸潤や毒素の影響かなど直接的な影響があったとまでは言及できないが何らかの関与があったものと考える。