第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 症例

[O19] 一般演題・口演19
感染・敗血症 症例03

2019年3月1日(金) 11:40 〜 12:20 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:相引 眞幸(愛媛大学大学院)

[O19-5] 敗血症治療中に多発血管炎性肉芽腫症を診断し得た1剖検例

富田 啓介, 児玉 善之, 今枝 太郎, 大網 毅彦, 奥 怜子, 中西 加寿也 (成田赤十字病院 救急・集中治療科)

【背景】多発血管炎性肉芽腫症 (Granulomatosis with polyangiitis, GPA)は, 主に上気道・肺・腎臓を障害する抗好中球細胞質抗体(Antineutrophil cytoplasmic antibody, ANCA)関連血管炎の一種である. GPAは稀な疾患であり, 集中治療領域において遭遇することは珍しく, 症例報告も少ない. 今回我々は, 肺の空洞病変の精査中に心肺停止となり, 蘇生後の治療の過程でGPAと診断し得た一例を経験し死後に病理解剖を実施することができたので報告する.【臨床経過】特に既往歴のない50代の男性. 1ヶ月続く咳嗽と全身倦怠感を主訴に近医を受診し, CTで肺に空洞病変を認め肺結核の疑いで当院へ紹介となった. 入院のうえ精査していたが, 第3病日に病棟で心肺停止となり, 蘇生後にICU入室となった. ICU入室時は多臓器不全の状態であり, 来院時に採取した血液培養からStaphylococcus aureusが検出されたため, 敗血症性ショックとして治療を開始した. 来院時より顔面や四肢に紫斑を多数認めていたため, ICU入室日に皮膚生検を実施したところ壊死性血管炎の所見を認めた. 急性腎傷害を合併していたことからIgA血管炎を疑い第7病日からPrednisolone 50mg/dayの投与を開始した. ICU入室時に提出したPR3-ANCAが陽性と判明したため鼻腔生検を施行したところ, GPAに特徴的な肉芽腫を認めたため, GPAの寛解導入療法として第9病日よりステロイドパルス療法を開始した. 第12病日に消化管出血からショックに陥り内視鏡的止血術を要したが, 以降も消化管病変の改善に乏しいためGPAの病勢が制御できていないと判断し第13病日にシクロフォスファミドの投与を追加した. 第16病日に腹膜刺激症状が出現し消化管穿孔の診断で緊急手術を行った. トライツ靭帯直後の空腸に穿孔を認めたため可及的な閉鎖術を行ったが, 壊死性変化は複数箇所・広範囲に及んでいた. 術翌日に再度消化管穿孔をきたし, 第21病日に死亡した. 病理解剖においては副鼻腔に加えて肺, 腎臓, 消化管においてGPAに特徴的な組織所見を認めた. 【結論】集中治療領域においてGPAは稀な疾患であるが, 紫斑や鼻腔内病変の精査から診断に至った. 消化管穿孔を合併したGPAは一般に予後不良だが、重症例に対して血漿交換などの治療が奏功した報告も散見される. 本症例においても早期から強力な治療を行うことで救命し得た可能性はあり, 文献的考察を加えて報告する.