[O2-2] 小児におけるデクスメデトミジンの効果
【背景】デクスメデトミジンは、短時間作用性のα2アドレナリン受容体作動薬であり、呼吸抑制が少ないという利点がある一方、除脈や低血圧などの副作用が起こりやすいことが知られている。小児に対する使用経験は成人にくらべ少なく、情報の蓄積が重要である。【目的】小児におけるデクスメデトミジンの効果を評価すること。【対象と方法】単施設、before-after研究。2015年1月から2018年7月までに、当院で口蓋裂形成術を施行されPICUに入室した2歳以下の小児患者を対象とした。2016年9月まではデクスメデトミジンを投与せず、それ以降は入室時よりデクスメデトミジンを開始した。非投与群、投与群の2群に分類し、年齢、性別、体重、入室時、8時間後、16時間後のバイタル(体温、心拍数、収縮期血圧、呼吸数)変化、FLACC scaleについて、診療録をもとに後方視的に検討した。術後に挿管人工呼吸器管理を要した症例、口蓋裂以外の既往歴を有する症例、デクスメデトミジン以外の鎮静剤持続投与を併用した症例は除外した。統計学的検討は、ノンパラメトリック変数に対してはMann-Whitney’s U testを用い、p<0.05を有意差ありとした。【結果】対象は非投与群14例、投与群14例で全28症例。デクスメデトミジンは急速飽和はせず0.4~0.6μg/kg/h(平均0.51μg/kg/h)で投与し、総投与時間は14時間~23時間(平均18時間50分)であった。月齢は9か月~16か月で平均値は非投与群:12か月、投与群:11か月。性別は非投与群:男児10例、女児4例、投与群:男児12例、女児2例。平均体重は、非投与群:8.kg、投与群:8.6kg。両群間で患者背景に有意差はみられなかった。体温、心拍数は、入室時、8時間後、16時間後のいずれも非投与群にくらべ投与群で低下していた。収縮期血圧は、入室時には両群で差はみられず、8時間後、16時間後では投与群で上昇傾向を示した。呼吸回数は、入室時、8時間後、16時間後のいずれも両群で差はみられなかった。FLACC scaleは非投与群で3例、投与群で5例の記載があり、値はそれぞれ4~9点、0~10点であった。 両群とも重大な有害事象はみられず、全例が術後1日目でPICUを退室した。【結語】デクスメデトミジンは小児において呼吸、循環を安定させた状態で鎮静が得られる可能性が示唆された。至適投与量の調節により、本薬剤の利点を最大限利用した小児鎮静における使用法とその有用性に関しさらなる検証に値すると考える。