[O20-1] 糖尿病性ガス壊疽を外来通院で治癒した一例
【背景】糖尿病性ガス壊疽は進行性の致死性疾患であり、感染の深達度によっては身体の機能予後にも影響し得ることから、入院下で十分な切開を置き慎重に加療すべきとするのが現在の治療のスタンダードである。しかし患者の中には社会的諸事情により入院加療が困難な者も存在する。今回我々は、血糖コントロール不良の糖尿病患者に発症したPasteurella multocidaによるガス壊疽に対して、外来加療にて治癒に導くことができた一例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は63歳女性。某年9月X日から右足関節より足背にかけての著明な腫脹、発赤、疼痛が出現したため、X+1日近医を受診、蜂窩織炎と判断され、2日間抗菌薬内服。X+3日症状の増悪を認めたため当院受診。受診初日は、バイタルサインは安定していたもののCT検査にてガス産生が認められ、糖尿病性ガス壊疽と診断した。入院の必要性につき患者に説明するも社会的理由により拒否されたため、外来通院治療の方針となった。直径1cm程度の局所切開排膿を行い、以後連日の創部洗浄、タンポンガーゼ交換、高流量酸素療法(酸素15L/分を5分間投与)、抗菌薬投与を行った。コントロール不良となっていた血糖値についても、強化インスリン療法を行った。上記加療にてX+6日を境に皮膚症状は軽減し、X+10日目には歩行時の疼痛がほぼ消失、最終的に右足を切断することなく保存的に治癒することに成功した。局所切開部の創部培養からはPasteurella multocidaが検出され、患者宅で飼っているネコの有する菌が糖尿病にて易感染性となった患者足部に感染したものと考えられた。【結論】糖尿病性ガス壊疽は進行性の致死性疾患であり、入院下で十分な切開を置き、抗菌薬等で加療すべきと考えるが、一部は当症例のように小切開と抗菌薬により外来で治癒し得る可能性がある。