第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O21] 一般演題・口演21
感染・敗血症 研究01

2019年3月1日(金) 14:50 〜 15:40 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:倉橋 清泰(国際医療福祉大学医学部 麻酔・集中治療医学講座)

[O21-2] 重症蜂窩織炎と壊死性筋膜炎の鑑別診断におけるLRINEC scoreの有用性の検討と新たな補助的診断方法の考察

中村 仁美1, 森村 尚登2, 中村 謙介1, 橋本 英樹1, 園生 智弘1, 高橋 雄治1, 奈良場 啓1, 神田 直樹1 (1.日立総合病院救命救急センター 救急集中治療科, 2.東京大学医学部付属病院 救急部)

【背景】壊死性筋膜炎は、死亡率の高い重症感染症であり早期診断治療が必要である。しかし、発症早期には蜂窩織炎との鑑別が難しい。両者の鑑別に用いられる指標としてLRINEC scoreが有名であるが、その有用性に関しては諸説ある。<BR>【目的】当院で経験した重症軟部組織感染症症例の採血データから、LRINEC scoreの有用性について検討した。また、LRINEC scoreを構成する6項目(WBC、Hb、Na、Cr、CRP、血糖値)以外の血液生化学データやバイタルサイン、患者背景を比較し、他にも診断に有用となる因子がないかを検討した。<BR>【方法】2017年3月から2018年8月までの間に当院で経験した壊死性筋膜炎・ガス壊疽群8例と重症蜂窩織炎群34例を対象とし、後ろ向きに解析した。症例における来院時の一般的な採血項目全て、バイタルサイン、年齢、糖尿病の既往に関して単変量解析で有意差を検定し、影響があると思われる因子に対し決定木分析を行った。<BR>【結果】壊死性筋膜炎・ガス壊疽群のLRINEC score(3~10、平均6.9)は重症蜂窩織炎群のLRINEC score(0~9、平均3.3)と比較して有意に高値であった。しかし、LRINEC score6点をカットオフ値とした場合、感度68.5%、特異度76.5%といずれもやや低値であった。LRINEC scoreを構成する項目において、2群間に有意差を認めたのは、6項目中WBC、CRP、血糖値の3項目のみであった。<BR>また、単変量解析での結果p<0.1となったのは、WBC(p=0.039)、Plt(p=0.059)、TP(p=0.053)、Alb(p=0.006)、ALP(p=0.098)、Cl(p=0.052)、Ca(p=0.031)、CRP(p=0.039)、血糖値(p=0.036)、収縮期血圧(p=0.027)、糖尿病の既往(p=0.08)であった。できるだけ多くの症例で壊死性筋膜炎を除外できる決定木分析を見出した結果、Alb≧3.1のとき50%以上の症例(23/42例)で壊死性筋膜炎・ガス壊疽を除外可能であった。さらにAlb<3.1でも、糖尿病の既往なし、かつCRP<20.56のとき壊死性筋膜炎・ガス壊疽ではないと言うことが出来た。これにより、3つの項目(Alb、糖尿病の既往、CRP)で壊死性筋膜炎・ガス壊疽の可能性が高い症例を全体の28.5%(12/42例)まで絞ることが出来た。<BR>【結論】LRINEC scoreは壊死性筋膜炎と蜂窩織炎の鑑別において有用かもしれないが、その構成項目に関しては議論の余地がある。新たな補助的診断項目として、Alb、糖尿病の既往が有用であると考えられた。