[O22-1] 敗血症モデルラットにおける腎機能に対するランジオロールの効果
【背景】敗血症性急性腎障害は、集中治療領域において、主要な患者死亡原因の一つである。近年、敗血症性ショックの治療薬としてβ1受容体遮断薬の有効性が報告され、臨床応用が期待されているが、敗血症性急性腎障害への有効性に関してはこれまで報告が少なく作用機序や効果も明らかではない。【目的】 Lipopolysaccharide(LPS) を投与した敗血症モデルラットを用いて、短時間作用型選択性β 1 遮断薬であるランジオロールの腎機能に対する作用を検討する。 【方法】Wistarラット(オス、300g)を1. sham群、2. LPS(7.5mg/kg)投与群、3. LPS(7.5mg/kg)+ランジオロール(100μg/kg/min)投与群に分けた(各群n=8)。ペントバルビタール50mg/kg腹腔内投与後に気管内挿管し、イソフルレンによる全身麻酔下に外頚静脈と総頚動脈へカニュレーションを行った。1・2群では生理食塩水を、3群ではランジオロールを溶解した生理食塩水を経静脈的に持続投与した。(ランジオロールは3時間後に投与終了した。)2・3群はLPSを経静脈的に投与した。0時間(LPS投与前)、3時間、6時間後に血液を採取して血中クレアチニン(Cr)、乳酸、TNFα、IL-6の値を測定し、血圧と心拍数を計測した。数値は平均±標準偏差で表し、群間比較はANOVA検定を用いてP値が0.05未満で有意差ありとした。【結果】6時間後の血中Cr値は、sham群(0.54±0.29 mg/dl)と比較して、LPS投与群(1.35±0.73 mg/dl)では有意に上昇したが、LPS+Lan投与群(0.94±0.23 mg/dl)では有意な上昇がなかった。乳酸値は、LPS投与群で有意に上昇し、LPS+Lan投与群で有意に抑制された。TNFαはLPS投与群、LPS+Lan投与群ともに有意に上昇した。LPS投与群のIL-6の上昇はLPS+Lan投与群で抑制された。収縮期血圧、心拍数は3群で有意差はなかった。【結論】ランジオロールは、敗血症モデルラットに対して、重大な循環動態の変化を引き起こすことなく投与することができた。ランジオロールは、敗血症初期に投与することで、炎症性サイトカインを抑制し、腎保護効果を発揮する可能性が示唆された。さらに、ランジオロールは乳酸値上昇を抑制しており、全身状態を改善する可能性も考えられた。