第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 基礎研究

[O22] 一般演題・口演22
感染・敗血症 基礎研究

2019年3月1日(金) 15:40 〜 16:20 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:坂本 壮(順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科)

[O22-4] 【優秀演題(口演)】マウス筋芽細胞においてエピネフリンはLPS刺激によって誘導されるIL-6とAtrogin-1 mRNA発現を増強する

松川 志乃, 甲斐 慎一, 鈴木 堅悟, 瀬尾 英哉, 福田 和彦 (京都大学大学院医学研究科 侵襲反応制御医学講座 麻酔科学分野)

【背景】ICU-acquired weakness (ICU-AW) は、集中治療を要する重症患者にみられる四肢筋力低下を特徴とする疾患群で、その発症はQOL低下と生命予後悪化の原因となる。特に敗血症患者の約半数がICU-AWを発症するとされている。敗血症モデルLipopolysaccharide (LPS)や炎症性物質IL-6は、骨格筋に存在する受容体を介して骨格筋の主要なタンパク分解系であるユビキチン・プロテアソーム系のユビキチンリガーゼAtrogin-1を増加させ骨格筋タンパク分解を促進することが知られており、さらに交感神経賦活化や循環作動薬によるカテコラミン過剰状態が敗血症におけるICU-AW発症に関与すると考えられるが、完全な病態解明には至っていない。そこで我々は、高濃度カテコラミンが敗血症における筋萎縮過程を促進し、その過程には筋細胞からのIL-6分泌が関与するという仮説を検証した。【目的】培養細胞を用いて、敗血症時にカテコラミンが筋細胞に与える影響を検討する。【方法】筋細胞に分化誘導したマウス由来筋芽細胞C2C12細胞にエピネフリン存在下および非存在下でLPSを投与し、Reverse Transcription qPCR法を用いてIL-6とAtrogin-1 mRNA発現量を評価した。【結果】IL-6 mRNA発現量はLPS投与で56倍、LPS/エピネフリン投与で183倍に増加した。Atrogin-1 mRNA発現量はLPS投与で 2.4倍、LPS/エピネフリン投与で3.7倍に増加した。エピネフリン単独投与ではIL-6及びAtrogin-1 mRNAの発現量の増加は認められなかった。【結論】マウス筋芽細胞において、エピネフリンはLPSによるIL-6、Atrogin-1mRNA発現誘導を増強することが明らかになり、敗血症におけるカテコラミン過剰が筋萎縮に関与し、その機序にはIL-6分泌が関与する可能性が示唆された。本研究結果がICU-AWの病態解明と新規治療戦略開発に貢献することが期待される。