[O23-3] アンチトロンビンによるneutrophil extracellular traps (NETs)抑制効果についての検討
【背景】 Neutrophil extracellular traps (NETs) は好中球の抗原除去法である一方、放出されるヒストンなどが臓器障害の原因となる。Antithrombin (AT) はレセプターであるsyndecan-4を介した抗炎症作用が報告されており、syndecan-4はprotein kinase C (PKC) αの発現に関与し、PKCαがNETsを抑制する報告がある。本研究は、lipopolysaccharide (LPS)刺激によりNETs誘導したヒト好中球におけるAT IIIの効果と、機序としてPKCαが関与するかを検討したものである。【方法】敗血症性ショック患者6名、健常人ボランティア19名より好中球を分離し、1×106 cells/mLに調整後、患者血球は培養開始から75分後にAT IIIを添加した。健常人血球はPKCα阻害剤で45分間刺激後、LPS(E.coli, O55:B5, 1 μg/mL)を添加し、その30分後にAT III (10 IU/mL)を添加した。37 °C 5% CO2で合計2時間または4時間培養を行った。NETs面積は蛍光免疫染色を用い、histone H1及び好中球エラスターゼを検出した。培養上清中の遊離ヒストンおよびエラスターゼ量はELISAにて検出した。また、PKCα, δ, および ζ の蛋白発現はwestern blotを用いた。【結果】敗血症性ショック患者6名中5名の好中球でAT IIIはNETs面積を減少させた(中央値:LPS単独刺激93.6 μm2 、LPS+AT III刺激44.0 μm2 (p=0.1))。健常人では、19名中14名の好中球で AT IIIはNETs面積を減少させた(中央値:LPS単独刺激48.2 μm2、LPS+AT III刺激30.5 μm2 (p<0.05))。蛋白発現はPKCα のみ発現がAT III刺激で増加する傾向にあった (p<0.1)。AT IIIにより上清の遊離ヒストンは減少(p<0.01)したが、エラスターゼは減少せず、PKCαを阻害するとNETs面積や遊離ヒストンの減少は解消された。【結論】AT IIIはLPSにより誘導したヒト好中球のNETs形成を減少させ、PKCαを介した機序が想定された。AT III投与は抗凝固のみならず、過剰なNETs形成による臓器障害にも効果が期待される。