第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O23] 一般演題・口演23
感染・敗血症 研究02

2019年3月1日(金) 16:20 〜 17:10 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:木下 浩作(日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野)

[O23-4] 重症感染症における来院時のトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)と入院後のDIC重症化の関係

神田 潤, 三宅 康史, 坂本 哲也 (帝京大学 医学部 救急医学講座)

【背景】
DICは原疾患の治療で改善するとされているが、治療開始後にDICが重症化・遷延することはしばしば経験する。トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)は、急性期DICスコアの定義には含まれていないが、DICにおける凝固活性化の指標であり、TAT>4ng/mlで異常高値であり、凝固亢進状態と判定される。TATとDICの重症化の関係についての先行研究としては、感染性疾患において、入院後のDIC発症は、TAT>10ng/mlで60%だったのに対して、TAT<7ng/mlでは0%だったという報告がある。但し、DICの定義には旧厚労省DIC診療基準スコアを用いていて、感染症の診断基準も曖昧である。
【目的】
血液培養が陽性となった重症敗血症において、来院時の凝固亢進状態(TATの異常高値)と治療開始後のDICの重症化の関係について、定量的にDICの重症化と経過を判定できる急性期DICスコアを用いて検討する。
【方法】
2018年1月1日~8月31日に帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターへ入院した患者のうち血液培養が陽性になり、来院時のTAT、来院時と入院3日目の急性期DICスコアと転帰が明らかな症例のうち、抗DIC治療を行った症例、3日以内に転院した症例、contaminationと判断した症例、有効な抗菌薬を投与できていなかった症例を除く22症例を対象とした。主要評価項目は、入院3日目の急性期DICスコアが来院時より悪化している症例と3日以内に死亡した症例をDIC重症化として定義した。TAT>10.0ng/mlとTAT≦10.0ng/mlのDIC重症化の比率を比較して、オッズ比を計算した。統計ソフトはSPSS ver.25を用いた。
【結果】
TAT≦10.0ng/mlのDIC重症化は0%(0/2)であったのに対して、TAT>10.0ng/mlのDIC重症化は65%(13/20)であった。TAT>10.0ng/mlのTAT≦10.0ng/mlに対するオッズ比は2.857(95%CI:1.572-5.192)で統計学的にも有意であった。
【結論】
有効な抗菌薬投与を行っていても、来院時の凝固亢進状態(TAT高値)によりDICが重症化している可能性が示唆された。