[O23-6] 敗血症患者に対するrTM早期投与の臓器保護作用の可能性についての報告
【背景】敗血症性DIC患者に対する遺伝子組換え型トロンボモジュリン(以下rTM)の有用性についての認識が高まりつつある。先行研究ではrTM治療とSOFAスコアとの間に関係があること、特に人工呼吸器離脱期間について優位に作用することなどrTMの臓器保護作用についての知見が集まりつつある。【目的】rTMが臓器保護に影響するのであれば、早期投与で臓器保護作用がより強まるのではないかと仮説を立てこれを検証した。【方法】2017年4月1日から2018年3月31日までに当救命救急センターに入院した患者のうち、敗血症かつ播種性血管内凝固と診断された患者を対象に症例対照研究を行い、rTMの投与時期の違いによる人工呼吸器装着・腎代替療法(以下RRT)施行の有無や期間、死亡率について分析した。【結果】入院初日からrTM投与を行った群(以下A群)9名、翌日から投与した群(以下B群)9名、3日目から投与した群(以下C群)9名、4日目以降に投与した群(以下D群)9名、rTM投与を行わなかった群(E群)13名の計49名が対象となった。各群平均年齢はA:77yo、B:76yo、C:75yo、D:70yo、E:77yoであった。5群それぞれの14日間ventilator free daysは中央値(四分位範囲)の順(以下同様)にA:14(9.0-14.0)、B:9(5.0-11.0)、C:5(0.0-6.0)、D:3(0.0-9.0)、E:1(0.0-8.0)であり、同様に14日間RRT free daysはA:14(11.0-14.0)、B:14(9.0-14.0)、C:14(4.0-14.0)、D:11(8.0-14.0)、E:7(2.0-14.0)となった。さらに、rTM投与時に人工呼吸器・RRT非施行であった症例を母数としてその後も施行されなかった割合(以下回避率)を計算したところ、人工呼吸器装着回避率:A:100%、B:100%、C:100%、D:100%、E:15.4%であり、RRT回避率はA:87.5%、B:83.3%、C:83.3%、D:83.3%、E:46.2%となっている。なお、rTMを投与した群全体(=A~D群の合算)では人工呼吸器装着回避率は100%、RRT回避率は84.6%となった。14日間死亡率はA:22.2%、B:11.1%、C:11.1%、D:33.3%、E:23.1%であった。【結論】より早期のrTM投与により、14日間人工呼吸器free daysおよび14日間RRT free daysともに、特に前者の改善に寄与する傾向が認められた。ただし死亡率はrTM早期投与による改善は認められなかった。回避率の比較からはrTMの投与により非投与群に比して人工呼吸器装着およびRRT施行を回避できる可能性がある一方で、その早期投与の効果については明らかではなく、今後の更なる症例集積が必要であることが分かった。