[O24-5] 外傷性頭蓋内出血合併症例における静脈血栓塞栓症の診断と治療
【目的】頭部外傷患者は血液凝固系の異常を来しやすく、静脈血栓塞栓症(VTE)発症頻度も高いとされる。一方受傷急性期は、頭蓋内出血増大を懸念して積極的な抗凝固療法の導入が困難であり、頭部外傷患者に対するVTEの予防・診断・治療法は未だ確立されていない。我々は、受傷後5日目以降において、D-dimerが3測定日連続して増加かつ15μg/ml以上で造影CTでのVTE検索を実施するというスクリーニング基準を作成しその有用性を報告した(日本救急医学会雑誌、2017)。本研究では、外傷性頭蓋内出血症例におけるVTEのスクリーニング基準の有用性を検討することを目的とした。【方法】対象は2016年1月から2017年12月に長崎大学病院高度救命救急センターで入院治療を行った外傷性頭蓋内出血症例。上記スクリーニング基準で検出されたVTE、および上記スクリーニング基準では検出されなかったVTEの診断過程や治療内容を後方視的に検討した。【結果】対象期間内に診療した外傷性頭蓋内出血72例のうち11例(15.3%)にVTEをを検出した。スクリーニング基準該当例は12例で、その内8例でVTEを認めた(陽性的中率66.7%)。基準非該当3例でVTEが検出されたが、これはD-dimer高値が持続するため撮像した造影CT(n=2)、および感染巣検索目的の全身造影CT(n=1)で検出された。上記11例はすべて無症候性であり、また上記以外で経過中にVTEによる症候を呈した症例は認められなかった。VTE症例は年齢30-85歳、男性7例で、VTEの内訳は下肢-腸骨静脈血栓9例、肺動脈血栓4例であった(重複あり)。VTEの治療開始は第6-36病日(中央値9)、全例がVTE発見後1日以内に治療開始され、いずれも治療開始後の頭蓋内出血増悪は認めなかった。【結論】頭部外傷例のVTE検出にスクリーニング基準は有効であった。また止血が確認された外傷性頭蓋内出血に対する抗凝固療法では重篤な合併症は認められなかった。