[O25-2] 集中治療を要する高齢外傷症例に対する治療効果に関する検討
【目的】人口の高齢化に伴い、救急搬送される患者における高齢者の占める割合も増加している。しかしながら、集中治療を要する高齢救急症例に対する治療効果に関しては一定の見解が得られていないのが現状である。本研究の目的は、救急外来を経由してICU入室となった80歳以上の高齢外傷症例に対する治療効果を評価することである。【方法】本研究の実施にあたり、当院倫理委員会の承認を得た(#2016-044)。2013年1月から2016年12月までに当院へ救急搬送されICU入室となった外傷症例を対象とした。対象を80歳以上(E群)と80歳未満(Y群)の2群に分け、臨床経過や入院中の医療費に関して後方視的に2群間で比較検討を行った。データは中央値(Quartile 1, 3)で表記した。統計ソフトはIBM SPSS Statistics 25を使用し、2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定、カイ二乗検定あるいはFisher正確確率検定を用いた。p<0.05をもって統計学的有意差ありとした。【成績】上記期間中に救急外来を経由してICU入室となったのは797名であった。このうち、対象となった外傷症例は107名で、E群:26名、Y群:81名だった。来院時のInjury Severity Score は2群間で有意差は無かった{E群:19(13, 32)、Y群:17(14, 25)、p=0.708}が、予測生存率(probability of survival; Ps)はE群がY群に比較して有意に低かった{E群:0.895(0.757, 0.950)、Y群:0.955(0.878, 0.986)、p=0.004}。ICU入室期間はE群{10(5, 23)日}がY群{4(3, 9)日}に比較して有意(p=0.001)に長く、入院期間もE群{33(13, 57)日}がY群{22(12, 42)日}よりも長かった(p=0.179)。院内死亡率は2群間で有意差なかった(E群:11.5%、Y群:6.2%、p=0.365)。入院による医療費はE群{2,604,785(1,377,255, 4,731,300)円}がY群{1,828,560(819,520, 2,810,880)円}に比べて有意に高かった(p=0.023)。【結論】当院で集中治療を要した80歳以上の高齢外傷症例のPsは80未満症例よりも低かったが、院内死亡率に有意差は無かった。しかしながら、集中治療を要する80歳以上の高齢外傷症例では、80歳未満の症例とほぼ同等の結果を得るためにより長期の集中治療管理と医療費が必要と思われた。