第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O25] 一般演題・口演25
外傷・熱傷 研究02

Fri. Mar 1, 2019 5:50 PM - 6:30 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:川副 友(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野)

[O25-4] 高齢外傷患者における身体的脆弱性の長期転帰への影響

齋藤 伸行, 岡田 一宏, 久城 正紀, 太田黒 崇伸, 八木 貴典, 松本 尚 (日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター)

【背景】集中治療室に入院した高齢外傷患者の身体的脆弱性(Physical fragility :PF)を評価することは長期予後の推定に役立つ可能性がある。入院前のClinical frailty scale(CFS)及び入院時CTを用いた筋量減少と骨量減少は、PFの指標として簡便に評価できる。【目的】高齢外傷患者においてPFと1年後の転帰との関連性を明らかにすること【方法】2016年1月から2017年7月までに当院外傷外科ICUへ入院し、生存退院した65歳以上の高齢外傷患者連続158人を対象として前向き調査を行った。PFの指標として、CFS、入院時CTでL3レベル腸腰筋横断総面積cm2/体表面積m2(SMI: skeletal muscle index)と第3腰椎椎体海綿骨の平均CTハンスフィールド値(BFI: bone fragility index)を用いた。転帰不良(P)は退院後1年までの死亡または自宅以外の療養とした。P群とnon-P群に分けて2群間比較を行い、関連性を検討した。さらに退院1年後のADL(SF-36)について回答を得た89人(56.3%)についてPFの有無により検討した。本研究は、当院倫理委員会の承認を得て、三井住友海上福祉財団の助成で実施した。【結果】対象患者の平均年齢74.2歳、ISS中央値20(四分位:14-29)、チャールソン並存疾患スコア1(0-1)で、男性が102人(64.6%)占めていた。P群は35人(22.2%)で、7人が亡くなった。P群はnon-P群と比較して、年齢が有意に高く(P:79歳 vs non-P:72歳)、人工呼吸実施割合も高かった(62.6% vs 26.8%)。また、P群でICU滞在期間、在院日数が有意に長かった(各P<0.01)。P群のCF>=4以上の割合が有意に高かったが(28.6% vs 4.1%)、両群間の平均SMI、BFIに差は認めなかった(SMI; P:610, non-p:663,P=0.266 / BFI; 109, 120, P=0.234)。1年後の転帰不良に関する多変量解析で、CFS>=4(オッズ比:4.95, 95%CI:1.25-19.6, P=0.023)と人工呼吸実施(4.07, 1.45-11.3, P=0.007)が独立した関連因子であった。骨量減少(BFI<100)のあった30人は、減少のなかった59人と比較して1年後の身体機能、身体的健康度が有意に低かった(PF:62.5 vs 80.0, P=0.016、PCS:32.4 vs 40.8, P=0.014)。一方、筋肉量減少と1年後のADLに関連を認めなかった。【結語】外傷外科ICUへ入院し生存退院した高齢者外傷患者のうち22%は、1年後時点で自宅に戻れていなかった。PFと長期転帰には関連があり、入院時点でリスクを把握することが重要である。また、骨量減少と身体機能低下の関連については、さらなる検討が必要である。