[O26-5] 成人ECMO回路により導入した肺血栓塞栓症による小児VA-ECMOの1例 ECMO導入時の工夫
【背景】小児に対するECMOは様々な技術革新により成人同様予後改善を示している.小児非専門医療機関では成人回路のみが準備されているのが現状で,小児ECMOを導入する場合のマニュアルやプロトコール,資源不足がある.【目的】小児非専門医療機関にて成人回路で小児へVA-ECMO導入を行った工夫を紹介する.【臨床経過】5歳,男児 1週間前から咳嗽,発熱あり.前日から飲水のたびに嘔吐が出現し当院受診.入院時CXRにて右下葉浸潤影を認め肺炎として入院となった.ABPC/SBT,CAMにて治療するも解熱せず.入院後5日目に突然SpO2低下を認めO2 5L投与でもSpO2 70%程度.呼吸不全のため一般病棟からICUへ移動し気管挿管施行するも100%O2投与で十分な換気量が得られてもSpO2 94-5%程度.UCGで右心系拡大,TRを認め造影CTで両側肺血栓塞栓症,左気胸,縦隔気腫を認めた.ヘパリン 20IU/kg/hrで投与開始,小児専門医療機関へコンサルトし,チーム来院を待機中にさらにSpO2低下し70%未満になることもあり,SpO2 40%,sBP50mmHgまで低下しVA-ECMO導入を決定した.送血は右大腿動脈を露出し,ヘパリン化した後に8Fr小児動脈ワンピースカニューレを挿入.脱血は右内頸静脈を露出し中枢は結紮,12Fr小児動脈ワンピースカニューレを留置した.ECMO導入前処理として,CAPIOXプライミングをサブラッドで行い,サブラッドを用いRBC4Uをセルセーバーで洗浄し電解質異常を可能な限り緩和,さらにアルブミンも回路内に満たし可能な限り浸透圧を生体に近づけ,プライミングによる希釈を最低限にするため回路を左記輸血製剤で満たした後にVA-ECMOを開始した.プライミング前にCAPIOX回路を10*6mmコネクターを用い,送脱血カニューレと直接接合できるよう6mmチューブに変更した.ECMO開始直後にBP120/70mmHg,SpO2 90%まで上昇.小児専門医療機関のチーム到着後,VA-ECMOのまま搬送となった.小児専門医療機関でECMOカテーテル入れ替えを施行され,搬送後4日目に開胸血栓除去術施行し,約2ヶ月後に独歩退院となった.【結論】早期に小児専門医療機関へのコンサルトが必須だが,成人回路を用いて小児VA ECMO導入は可能であった.