第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 研究

[O27] 一般演題・口演27
補助循環 研究01

Fri. Mar 1, 2019 9:40 AM - 10:30 AM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:市場 晋吾(日本医科大学付属病院 外科系集中治療科)

[O27-3] ECMO管理中の頭蓋内合併症の予測因子に関する検討

上田 吉宏1, 高井 大輔1, 水野 仁介1, 前田 明倫1, 土井 研人1, 森村 尚登1, 小室 一成2, 中島 淳3, 小野 稔4 (1.東京大学 医学部 救急科学教室, 2.東京大学 医学部 循環器内科, 3.東京大学 医学部 呼吸器外科, 4.東京大学 医学部 心臓外科)

【背景】重度の呼吸循環不全患者に対する治療としてECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)を用いる際に抗凝固療薬を用いる必要があるが、管理上重要な副作用として出血が挙げられる。多くはカニュラ刺入部からの出血など制御可能なものであるが、頭蓋内イベントはECMO管理継続を困難にさせる要素であり、時に致死的になりうる有害事象である。【目的】ECMO管理中の患者の頭蓋内合併症の予測因子の特定を図る。【方法】後ろ向き観察研究。対象は2013年1月から2018年3月の期間に、当院ICUでECMO管理を行った120症例(VA-ECMO 103例、VV-ECMO 17例)。頭蓋内合併症の有無で2群に分け、患者背景・管理中の検査値などの各種パラメータを比較した。【結果】全120例の年齢の中央値は54歳、男性84例、女性36例で、6例(5%)に頭蓋内合併症を認めた(VA-ECMO 3例、VV-ECMO 3例)。全症例で頭蓋内合併症なし群とあり群の間で年齢(なし群55.3±15.4歳、あり群41.8±22.8歳、P=0.043)、ECMO駆動時間(なし群151.3±221.8時間、あり群917.7±1736.5時間、P=0.015)、アンチトロンビン製剤の使用の有無(P=0.0015)、肝障害の有無(P=0.04)、CRRT併用の有無(P=0.04)、血液培養陽性(P=0.00015)の6因子で有意差を認めた。抗凝固療法の管理目標として用いるACT値やAPTTに有意差は認めなかった。多変量解析ではアンチトロンビン製剤の使用(Odds Ratio 11.443; 95% CI 1.445-90.637; P=0.021)、血液培養陽性(Odds Ratio 8.286; 95% CI 1.099-62.488; P=0.040)が独立した予後因子として特定された。次にサブグループとしてVA-ECMO患者とVV-ECMO患者に分け、同様の検討を行った。VA-ECMO症例では頭蓋内合併症のなし群とあり群の間で年齢、ECMO駆動時間、NO吸入の有無の3因子で有意差を認めたが、多変量解析で独立した予後因子として特定できるものはなかった。VV-ECMO症例では頭蓋内合併症のなし群とあり群の間で性別、ECMO開始前の筋弛緩薬使用の有無、肝障害の有無、CRRT並施の有無の4因子で有意差を認めたが、多変量解析で独立した予後因子として特定できるものはなかった。【結論】ECMO管理においてアンチトロンビン製剤の使用、血液培養陽性所見は、頭蓋内合併症のリスクを上げる因子となりうるかもしれない。