[O27-3] ECMO管理中の頭蓋内合併症の予測因子に関する検討
【背景】重度の呼吸循環不全患者に対する治療としてECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)を用いる際に抗凝固療薬を用いる必要があるが、管理上重要な副作用として出血が挙げられる。多くはカニュラ刺入部からの出血など制御可能なものであるが、頭蓋内イベントはECMO管理継続を困難にさせる要素であり、時に致死的になりうる有害事象である。【目的】ECMO管理中の患者の頭蓋内合併症の予測因子の特定を図る。【方法】後ろ向き観察研究。対象は2013年1月から2018年3月の期間に、当院ICUでECMO管理を行った120症例(VA-ECMO 103例、VV-ECMO 17例)。頭蓋内合併症の有無で2群に分け、患者背景・管理中の検査値などの各種パラメータを比較した。【結果】全120例の年齢の中央値は54歳、男性84例、女性36例で、6例(5%)に頭蓋内合併症を認めた(VA-ECMO 3例、VV-ECMO 3例)。全症例で頭蓋内合併症なし群とあり群の間で年齢(なし群55.3±15.4歳、あり群41.8±22.8歳、P=0.043)、ECMO駆動時間(なし群151.3±221.8時間、あり群917.7±1736.5時間、P=0.015)、アンチトロンビン製剤の使用の有無(P=0.0015)、肝障害の有無(P=0.04)、CRRT併用の有無(P=0.04)、血液培養陽性(P=0.00015)の6因子で有意差を認めた。抗凝固療法の管理目標として用いるACT値やAPTTに有意差は認めなかった。多変量解析ではアンチトロンビン製剤の使用(Odds Ratio 11.443; 95% CI 1.445-90.637; P=0.021)、血液培養陽性(Odds Ratio 8.286; 95% CI 1.099-62.488; P=0.040)が独立した予後因子として特定された。次にサブグループとしてVA-ECMO患者とVV-ECMO患者に分け、同様の検討を行った。VA-ECMO症例では頭蓋内合併症のなし群とあり群の間で年齢、ECMO駆動時間、NO吸入の有無の3因子で有意差を認めたが、多変量解析で独立した予後因子として特定できるものはなかった。VV-ECMO症例では頭蓋内合併症のなし群とあり群の間で性別、ECMO開始前の筋弛緩薬使用の有無、肝障害の有無、CRRT並施の有無の4因子で有意差を認めたが、多変量解析で独立した予後因子として特定できるものはなかった。【結論】ECMO管理においてアンチトロンビン製剤の使用、血液培養陽性所見は、頭蓋内合併症のリスクを上げる因子となりうるかもしれない。