第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 研究

[O27] 一般演題・口演27
補助循環 研究01

Fri. Mar 1, 2019 9:40 AM - 10:30 AM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:市場 晋吾(日本医科大学付属病院 外科系集中治療科)

[O27-4] 重症呼吸不全患者に対するECMOの有効性の検討-単施設 retrospective cohort study-

萩原 祥弘1,2, 清水 敬樹1, 中田 善規2, 笠原 道1, 濱口 純1, 荒川 裕貴1, 鈴木 茂利雄1, 光銭 大裕1, 金子 仁1, 三宅 康史3 (1.東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター, 2.帝京大学大学院 公衆衛生学研究科, 3.帝京大学 医学部 救急医学講座)

【背景】2009年CESAR trialにおいて ECMO(extracorporeal membrane oxygenation)による重症呼吸不全患者の予後改善が示唆されて以降, Respiratory ECMO導入例は世界的規模で増加傾向にある.一方で超高齢社会を抱える本邦からのrespiratory ECMOに関する研究報告は少なく,その有効性は明確に示されていない現状がある.【目的】本邦における重症呼吸不全患者に対するECMOの有効性を明らかにする.【方法】2010年4月から2017年7月までの期間中,東京都立多摩総合医療センターで人工呼吸管理を施行した入院患者1745例を標本集団とし重症呼吸不全患者(P/F<150)のみを対象患者として診療録より抽出した.その内,呼吸補助目的にECMOが導入された群(以下E群) と人工呼吸器のみで管理した従来治療群(以下C群)の2群に分け,後方視的コホート研究を行った.C群の抽出段階において,ECMO不適応となるような病態 (高圧高濃度酸素設定の人工呼吸管理が7日以上継続・末期癌・中枢神経障害の合併など)を除外した.主要評価アウトカムを生存退院の有無とし,生存時間解析として累積生存率の推移をKaplan-Meier法で表し,2群の生存時間分布はLog-rank検定を用いて比較した.多変量解析として Cox比例ハザードモデル(Y=1;死亡イベント)を用い各共変量を補正した上でECMO介入における入院中死亡の調整HRを算出した.【結果】E群は43例,C群は51例であった. 2群の背景の比較では,E群の方が有意に年齢が低く(E群中央値60歳vs. C群72歳, p<0.01),高圧及び高濃度酸素設定の人工呼吸期間が短かった(E群中央値1日vs. C群3日, p<0.001).肺の原疾患,呼吸不全の重症度,全身の重症度スコアでは2群間で有意な差は認めなかった.主要評価アウトカムの生存退院率は2群間で有意な差は認めなかった(E群56% vs. C群35%,p=0.06). log-rank検定では,ECMO治療群の方が人工呼吸器群に比べて有意に生存率が高かった(p<0.01). 入院中死亡に関する多変量解析では,年齢・臓器不全スコア(SOFA score)・併存疾患スコア(Charlson Risk Index)の3つの因子で調整したとき,ECMO導入による入院中死亡の調整HR0.25(95%CI; [0.12, 0.49], p<0.01)であり,ECMOは従来治療よりも入院中死亡リスクを75%低下させた.【結論】本邦での重症呼吸不全患者において,従来の人工呼吸管理に比べECMO導入により予後が改善される可能性が示された.