[O28-2] 多発外傷後の重症呼吸不全に対し、V-V ECMOを使用し救命し得た1例
【背景】体外式膜型人工肺(ECMO)は、重症呼吸不全に対し肺を休め、人工呼吸惹起性肺障害(VILI)を予防し、その間に肺が回復することを待つ治療である。今回我々は、多発外傷後の重症呼吸不全症例に対しV-V ECMOを導入し、救命した症例を経験したので報告する。【症例・経過】80歳代男性, 160 cm, 59 kg201X年某日、トラクターの下敷きとなり、胸部外傷、骨盤外傷で同日当院救急搬送された。出血性ショックとなり、気管挿管下に大量輸血され、骨盤創外固定術が施行された。術後は救命救急センター病棟に入室し緊張性気胸、血胸に対して両側胸腔ドレーンが留置されたが、胸腔からのair leakが多く、P/F ratio 100 程度で血行動態も安定しなかったため、受傷後4日目に肺縫縮術、肋骨骨折観血的手術、骨盤骨折観血的手術が施行された。術中、循環動態不安定で低酸素状態が遷延していたため、術後当ICU入室となった。ICU入室時、APACHE2 score 28点、SOFA score 14点であった。ICU入室後、筋弛緩薬持続投与下人工呼吸器管理やNO吸入療法を施行したが酸素化の改善は乏しかった。ICU入室2日目にP/F ratio 100程度と低酸素血症の改善認めずMurray scoreも 2.5以上とECMO導入基準を満たしたためV-V ECMOを導入した。導入後は肺保護的人工呼吸器管理を行い、ICU入室4日目に気管切開を施行した。ICU入室8日目にweaning testでP/F ratio 238と酸素化の改善を認めたため、V-V ECMO離脱となった。V-V ECMO離脱後も酸素化は安定しており、受傷後22日後にICU退室となり、救命救急センター病棟へ転棟となった。その後も酸素投与量は漸減でき経口摂取も可能となり全身状態改善したため、受傷2ヶ月後に転院となった。【結論】多発外傷後の重症呼吸不全に対し、V-V ECMOを含めた集学的管理を行い比較的短期間に呼吸状態の改善を認めた症例を経験したので文献的考察を踏まえて報告する。