第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

補助循環 症例

[O28] 一般演題・口演28
補助循環 症例02

Fri. Mar 1, 2019 10:30 AM - 11:20 AM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:荒川 裕貴(東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター)

[O28-3] 吸入損傷により体外膜型肺による呼吸管理を要した重症呼吸不全の一例

富永 直樹, 増野 智彦, 瀧口 徹, 濱口 拓郎, 金谷 貴大, 溝渕 大騎, 重田 健太, 宮内 雅人, 横堀 將司, 横田 裕行 (日本医科大学付属病院 高度救命救急センター)

【背景】吸入損傷は死亡率の上昇と相関するリスク因子であり、吸入損傷による損傷のメカニズムは、上気道損傷、下気道損傷、肺実質損傷、全身毒性に分類される。このうち、下気道損傷は煙に含まれる化学物質が原因とされており、気管支への血流増加および血管透過性の亢進を機序として、杯細胞からの分泌物の増加とキャストとよばれる粘液栓により気道閉塞を来しうる。今回、吸入損傷単独の症例で、主に下気道損傷による気道閉塞により体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を導入した症例を経験したため、報告する。【臨床経過】症例は72歳の男性。蚊取線香が布団に引火し、室内に充満した煙を吸入し、呼吸困難を主訴として救急搬送となった。体表面上の熱傷は認めないものの、CO-Hbが高値であり、一酸化炭素中毒の診断で気管挿管後に高気圧酸素療法を開始した。しかし、経過中に著明な喘鳴および呼気の延長が出現し、換気不良となり呼吸状態が悪化した。喘息発作との鑑別を要したが、気管支鏡検査において気管支粘膜の発赤および浮腫状変化を認め、吸入損傷の診断となった。酸素化は維持されており肺野のX線透過性はむしろ亢進していたものの、経時的に換気障害が悪化し、著明な高二酸化炭素血症が進行したため第5病日にVV (veno venous)- ECMOを導入した。ECMO導入後は、極端な除呼吸の設定でも空気を呼出しきれない状態が続いたが、Lung restおよび呼気終末陽圧換気を行った。内視鏡所見とともに徐々に呼吸状態も改善したため、第14病日にVV-ECMO離脱となった。呼吸状態は良好であり、一酸化炭素中毒も含めて有意な後遺症なく、リハビリテーション目的で第25病日に転院となった。【結論】吸入損傷に対して、体外膜型肺による呼吸管理を要した症例を経験した。重症呼吸不全としては非典型的であったが、末梢気道閉塞に伴う肺の過膨張により胸部X線所見でのX線透過性が亢進していた。吸入損傷に矛盾しない現病歴があり、喘息治療に反応しない重篤な換気障害を呈した場合、胸部X線所見から下気道損傷を疑い積極的に気管支鏡検査を行い、診断をつけることが重要と考えられえた。