[O29-3] 持続的腎代替療法の条件設定に難渋した、骨髄移植後肺・腎障害合併くも膜下出血の一例
【背景】腎代替療法は患者の有する合併症により特殊な条件設定が必要となることがある。脳出血後には脳圧亢進抑制のため、持続的血液浄化療法(CRRT)のように浸透圧を急に変化させない緩徐な血液浄化が推奨される。慢性呼吸器疾患を持つ患者ではHCO3補充によるCO2貯留が問題となり、HCO3濃度を減らした透析液を用いることがある。また感染症合併時には高度な代謝性アシドーシス改善のため、高効率での施行が必要となることがある。これら3つの病態を合併しCRRT条件設定に難渋した症例を経験した【臨床経過】50歳代、男性。X-16年に急性骨髄性白血病に対して骨髄移植が施行され寛解が得られたが、移植後肺障害を認め、在宅酸素療法とステロイドで加療されていた。また移植後血栓性微小血管障害症による慢性腎不全が悪化し、X-4年に血液透析が導入されていた。X年7月に意識消失で当院搬送となった。重症血腫型くも膜下出血を認め、開頭クリッピング術と血腫除去術を施行された。人工呼吸器管理、脳槽ドレーン留置下でICU入室となった。術当日にはpCO2 90 mmHgまで悪化を認めたが、呼吸器設定の調整と意識状態改善に伴いCPAPのみでもCO2貯留は認めなくなった。血液浄化は入院4日目よりCRRTを開始し、低効率の持続的血液ろ過(CHF)に設定した。意識は入院時E3VTM5からE4VTM6まで改善したが、入院6日目に肺炎を発症した。アシドーシス悪化を認め、通常効率の持続的血液ろ過透析(CHDF)に設定変更した。その後よりCO2貯留を認め、pCO2 85 mmHg、pH 7.0まで悪化を認めた。肺炎は抗菌薬加療で改善傾向であったが、呼吸器の設定変更ではCO2改善は得られず、意識もE1VTM4に悪化した。入院7日目より低効率のCHFに戻し、さらに透析液のHCO3濃度を35 mEq/l→23 mEq/lに減少させた。pCO2は改善傾向となったが、血中HCO3濃度は低下しpH改善も不十分なため、通常効率CHDFとし透析液のHCO3濃度も元に戻した。血中HCO3は改善した一方でpCO2は再度悪化傾向となった。次第にpHや酸素化も悪化し、意識状態改善はなく、患者は入院14日目に死亡した【結論】腎代替療法における特殊な条件設定は、個々の合併症に対しての手法は確立されてきているが、本例のように複数の合併症を有した際の条件設定に関しては多くのジレンマがあり、さらなる検討が必要である。