第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

消化管・肝・腎 症例

[O29] 一般演題・口演29
消化管・肝・腎 症例01

2019年3月1日(金) 11:20 〜 12:20 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:遠藤 彰(東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)

[O29-4] ICU入室中に腎うっ血によると考えられた腎機能悪化が見られた2症例

都築 通孝1, 寺田 貴史2, 沖島 正幸3, 戸田 州俊4, 太田 祐介5, 中前 健二3 (1.豊田厚生病院 救急科, 2.豊田厚生病院 心臓外科, 3.豊田厚生病院 臨床工学技術科, 4.豊田厚生病院 薬剤部, 5.豊田厚生病院 麻酔科)

【背景】ICU入室中の重症患者において腎機能悪化はしばしば認められる.急性のうっ血性心不全の患者においては体液減少の程度の小ささが腎機能悪化と関連しているとする報告がある一方,腎機能の悪化は心係数または肺動脈楔入圧,体血管抵抗と関連がなかったという報告もある.また近年慢性心不全の予後に関して腎うっ血の関与が示唆されている.我々は尿量減少にも関わらず中心静脈圧(CVP)高値,腎葉間静脈血流(IRVF: intrarenal venous flow)が超音波にて腎うっ血が否定できないパターンを示した症例を2例経験した.またこの2症例において利尿薬投与等によりCVPの低下と共にIRVFパターンの改善が見られたので報告する.IRVFパターンについてはIida Nらの分類(J Am Coll Cardiol HF 2016; 4: 674-682) によった.【臨床経過】症例1: 69歳男性,胆管癌・内視鏡的逆行性胆管膵管造影後膵炎にて膵頭十二指腸切除及び右半結腸切除施行,癒着解除操作にて長時間手術となり閉腹できずICU入室.既往歴: 特記すべきものなし.術後2日に腹腔内洗浄,止血及び回腸切除しICU再入室した.この際CVP 22 mm Hg (呼気終末圧 4 cm H2O, Flo Tracによる連続心係数>3 L/min/m2)であったが乏尿見られ,IRVFはbiphasic (B) pattern, FE-Na 0.3%であった.furosemide投与による尿量増及び腹水によるマイナスバランスとともにCVPの低下及び IRVFパターン改善見られ,その後自尿の自然増が見られた.術後5日,CVP 11 mm Hg (呼気終末圧 8 cm H2O), IRVFパターンはcontinuous venous flow (C) patternとなった.CREのpeakは術後3日で3.18 mg/dl,術後6日に2.10 mg/dlとなった.症例2: 64歳女性,二尖弁による大動脈弁狭窄症に対し大動脈弁置換後ICU入室.既存歴: 気管支喘息,既往歴: 副鼻腔炎,十二指腸潰瘍・胃炎.術後は経過問題なかったが術後1日尿量減少(furosemide計20 mg ivするも720 ml/day).術後2日朝CVP 12 mm Hg, CRE 0.74 mg/dlと0.14 mg/dl上昇,IRVFはB pattern, FE-Na 0.0であった.furosemide 20 mg iv及びnicardipine offにしたところ利尿がつき始め3290 ml/day, 術後3日CVP 2 mm Hg, CRE 0.62 mg/dlとなりIRVFパターンはほぼC patternとなった.【結論】ICU入室患者において腎機能悪化がみられた際,腎うっ血が関与していると考えられる症例の存在が示唆された.また,腎うっ血の評価としてIRVFの評価が有用である可能性が示唆された.