第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

消化管・肝・腎 症例

[O29] 一般演題・口演29
消化管・肝・腎 症例01

2019年3月1日(金) 11:20 〜 12:20 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:遠藤 彰(東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)

[O29-5] アナフィラキシーショックに次いでアレルギー性急性間質性腎炎を生じた1例

吉岡 義朗, 千田 康之, 佐々木 徹, 篠原 一彰 (太田西ノ内病院 救命救急センター)

【緒言】
急性腎障害(acute kidney injury; AKI)は臨床においてしばしば遭遇する病態だが、急性間質性腎炎(acute interstitial nephritis; AIN)によるものはわずか1~3%と言われる。AINの原因は感染や自己免疫など多岐にわたるが、薬剤性・アレルギー性が6~7割と最も多く、IV型アレルギーとされる。確定診断は腎生検のみ。アレルギー性AIN(AAIN)では、経験的に副腎皮質ステロイドが有効と言われる。AINは予後良好だが、慢性腎臓病への移行やまれに致死的な経過をたどることもあり、早期の認知、診断、治療介入が必要な病態である。AAINではAKIの諸症状に加え発疹の出現が報告されているが、I型アレルギー反応であるアナフィラキシーと関連付ける報告や文献は国際的にもほぼ皆無である。
【症例】
35歳男性。大酒家。既往はアトピー性皮膚炎・アルコール性肝障害。午前7時に起床時、嘔気や倦怠感の二日酔い症状に対して過去に内服歴のある六君子湯TMとモサプリドを服用。10時には常用の市販サプリメント2種を内服し、シャワーを浴びた。11時30分頃、腹部から臀部に膨疹が出現。急速に全身へ拡大し関節痛も認めた。12時頃には呼吸苦や悪寒も生じたため救急要請。当院搬送時、喘鳴は認めず気道は開通していたが、RR 30/min, HR 100/min, BP 100/60mmHgのショック状態であった。直ちにアドレナリン0.3mgを筋注し、症状は改善。救命センターに入院したが、入院後は再発なし。腎機能に関して、入院時には正常だったCre値が翌日に上昇(0.68→2.60mg/dL)し、その後も経時的に上昇が続いた。第3病日にはAAINを疑ってステロイドパルス療法(mPSL 500mg×3日間)を開始。第4病日には高K血症ならびに代謝性アシドーシスを認めたため人工透析を導入した。隔日の透析を要したが第15病日の6回目を最後に離脱した。第20病日に施行した腎生検でAINと診断された。ステロイド内服を継続しつつ、第35病日に自宅退院した。なお、入院中二度にわたり施行したDLSTでは被疑薬(六君子湯TM・モサプリド・サプリメント2種)はすべて陽性だった。
【結論】
アナフィラキシーショックに次いでAAINを生じ、一時的な透析導入を余儀なくされた症例を経験した。同一原因物質によると考えられるI型とIV型アレルギーの重複という極めて稀な病態であった。I型とIV型のアレルギーが関与するアトピー性皮膚炎の既往があり、何らかの影響を及ぼした可能性がある。