[O29-7] 溺水後に急性腎障害を合併した1例
【背景】溺水における臓器障害の主な病態は、低酸素血症、アシドーシス、及び低還流である。溺水に関するほとんどの文献は肺水腫や誤嚥性肺炎などの肺障害に焦点を当てている。近年、浸水や溺水に合併した急性腎障害に関する報告が見られるようになってきた。今回、溺水後急性腎障害を来した症例を経験したので報告する。【臨床経過】23歳男性。主訴は溺水。海でシュノーケリング中に足をつってしまい溺水。友人により救助されたとき、JCS10程度の意識障害と顔面蒼白を認め救急要請となりドクターヘリで当院搬送となった。当院到着時、O210L投与下でSpO2は92%と低下し胸部レントゲン上両肺野透過性低下を認めた。血液ガス検査ではpH7.251, pO2132, pCO233.8, HCO3-14.4, Base-11.7, Lac11.2であった。直ちに気管挿管後人工呼吸器管理となった。ICU入室後、呼吸状態は改善し第2病日で抜管した。しかし、その後徐々に乏尿とCre上昇、肺水腫を認め、急性腎不全のため第4病日にはCre9.98、BUN52であり緊急血液透析が導入された。計6回の血液透析の後、尿量、呼吸状態、CreとBUNの値も改善したため、血液透析離脱となり退院となった。【結論】溺水後急性腎障害の機序としては、低酸素血症、アシドーシスの病態が主な原因とされている。今回初診時の尿酸が18.4mg/dと高値だった理由として、筋原性高尿酸血症、無酸素運動による腎血流低下、嫌気性代謝による乳酸高値による関与があると考えた。いずれの病態も腎機能に影響を与える可能性があり、高尿酸血症が溺水後急性腎不全の急性腎不全との関連が示唆された。