第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

内分泌・代謝 症例

[O3] 一般演題・口演3
内分泌・代謝 症例01

2019年3月1日(金) 15:05 〜 16:05 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:蒲地 正幸(産業医科大学病院 集中治療部)

[O3-4] 急性リンパ性白血病の再発に随伴する高カルシウム血症に対して持続濾過透析を行った小児例

田中 麻須実, 正谷 憲宏, 堀川 慎二郎, 荻原 重俊, 小谷 匡史, 居石 崇志, 齊藤 修, 清水 直樹 (東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部 集中治療科)

【背景】悪性腫瘍を伴う高カルシウム(Ca)血症は、意識障害、腎障害、不整脈を起こして時に致死的となる。今回、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia; ALL)再発に伴う高Ca血症を来し、持続濾過透析(continuous hemodialysis filtration; CHDF)を行った小児例を経験したので報告する。【症例】3歳男児。2歳時にB前駆細胞性ALLを発症。初回化学療法中に再発を認め、造血幹細胞移植により寛解。3日間持続する食欲低下と活気不良を主訴に救急外来受診。重度脱水と意識障害(GCS E3V4M6)、高Ca血症(Ca 21 mg/dL、イオン化Ca 2.7mmol/L)を認めた。腎障害は重度ではなく、心電図上QTc 349msecとQT短縮を認めたが不整脈は認めなかった。大量補液と利尿剤投与に加え、著明な高Ca血症に対してCHDFを開始。24時間後にはイオン化Ca 2.1mmol/Lと低下、入院2日目にビスホスホネートを開始、尿中Ca排泄は入院2日目39mg/kg/day(正常<4mg/kg/day)をピークに減少したため4日目にCHDFを離脱したがCa再上昇なく、5日目の尿Ca 20mg/kg/dayと減少しており血液浄化療法を離脱した。7日目には3.3mg/kg/dayと正常化を確認した。CHDF濾液への推定Ca除去量(211 mg/day)は、尿中推定排泄量(424 mg/day)の半分以下であった(4日目)。高Ca血症の原因精査においてiPTH、PTHrP、1,25-OH2VitDの上昇はなく、CTで頭蓋骨・肋骨・椎体に骨融解像を認めた。腫瘍による骨破壊が疑われ、後日に行われた頭蓋骨生検より白血病髄外再発と診断された。【考察】血清Caは再上昇することなく尿中Ca排泄は著減しており、ビスホスホネートによる骨破壊の抑制が有効だった。ビスホスホネートの効果に数日を要した一方で、CHDFが迅速なCa値低下に有効であり、不整脈をきたすことなく経過した。CHDF濾液への排泄効率が低いのは、CHDF補充液Ca濃度が1.8mmol/Lと高いことが影響した可能性がある。CHDF必要期間の検討には、尿中・濾液中Ca濃度の測定が参考になった。【結語】悪性腫瘍患者に伴う高Ca血症には、迅速な集学的治療が重要であり、血液濾過透析は速やかにCa値を低下させるのに有用であったが、低下が緩徐な場合には濾液組成に工夫が必要となる余地が示唆された。一方、高Ca血症の原因は多岐にわたり、維持療法への移行のためにも、原因の鑑別は重要である。