[O3-7] 低体温合併の糖尿病ケトアシドーシスに対し,血管内体温管理システムを使用した1例
【背景】糖尿病ケトアシドーシスでは低体温の合併がしばしばみられる.低体温はインスリン抵抗性を引き起こし,高血糖の悪循環を引き起こす.今回,低体温合併の糖尿病ケトアシドーシスにおいて,血管内体温管理システムを使用した体温管理によって血糖管理できた1例を経験したので報告する.【臨床経過】30歳台女性.東南アジアからの訪日旅行者.糖尿病でインスリン治療(二相性プロタミン結晶性インスリンアスパルト1日2回注射)を受けている.ある冬の日の朝から腹痛及び嘔吐が出現し,同日近医を受診した.ショック,意識障害,高血糖,低体温がみられ,精査加療のため当院転院搬送となった.来院時の身体所見は心拍数 122回/分,血圧 83/66 mmHg,SpO2 100%(酸素 5L/分),呼吸回数 24回/分,反応なし,膀胱温 31.6℃であった.動脈血液ガス分析(酸素 5L/分投与下)では,pH 6.74, PaCO2 11.6 mmHg, PaO2 154 mmHg, HCO3 1.5 mmHgと高度の代謝性アシドーシスがみられ,血糖 820 mg/dl, ケトン体 13070 μmol/Lであることから糖尿病性ケトアシドーシスと診断した.気管挿管の上,レギュラーインスリン持続静注や輸液負荷を開始した.インスリン高用量(レギュラーインスリン 最大30 U/h)投与するも当初は血糖値低下しなかったが,ICU入室後に血管内体温管理システム(サーモガード®COOLLINE®カテーテル)を開始したところ(膀胱温 32.8℃),復温とともに血糖低下得られ,インスリン必要量も漸減でき,最終的には良好な血糖をレギュラーインスリン 1.0 U/hで維持できた.来院約8時間後に復温終了(膀胱温 36.8℃)し,第3病日抜管ののち,第4病日集中治療室退室,第7病日退院となった.抗GAD抗体陽性(8.8 U/ml)及びCPR 感度未満(<0.02 ng/ml)であり,1型糖尿病と考えられた.【結論】低体温合併の糖尿病性ケトアシドーシスに対し,血管内体温管理システムを使用した症例を経験した.適切な体温管理が糖尿病性ケトアシドーシスの治療に重要であり,血管内体温管理システムはその一助になる.