第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

消化管・肝・腎 研究

[O30] 一般演題・口演30
消化管・肝・腎 研究

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:小野寺 悠(山形大学医学部附属病院高度集中治療センター)

[O30-5] 当院ICUにおけるストレス消化管潰瘍予防に対する胃酸分泌抑制薬のルーチン処方の見直し

丹羽 英智1, 橋場 英二2, 櫛方 哲也3, 廣田 和美3 (1.弘前大学医学部附属病院 麻酔科, 2.弘前大学医学部附属病院 集中治療部, 3.弘前大学大学院医学研究科 麻酔科学講座)

背景ICU患者において、ストレス消化管潰瘍により臨床的意義のある出血を認めた場合の死亡率は非常に高い。そのため、その予防は、ICUにおいて標準的治療と考えられている。これに対して、当院ICUでは、以前より、ほぼ全ての患者に酸分泌抑制薬であるプロトンポンプインヒビター(PPI)、H2ブロッカー(H2B)を経静脈的に投与してきた。しかし、一方で経静脈的投与が経口投与に比べ予防効果が高いという確証は得られていない。更には、ICUにおける酸分泌抑制薬の投与は、ストレス消化管潰瘍のリスクが高い患者にのみ行い、ルーチン投与は避けた方が良いとも言われている。目的 今回、我々は、当院ICUにおける酸分泌抑制薬の投与法(経静脈、経口)、消化管出血の発生状況、薬剤費を後方視的に調査し、消化管潰瘍予防効果、コスト面から当施設のルーチン処方のあり方を評価した。方法2017年1月~2018年2月の当院ICUにおける酸分泌抑制薬の全処方箋から、投与薬剤、投与法を調べた。消化管出血の有無は、アルギン酸ナトリウムの処方を参考に発生率を確認した。結果のべ4759処方箋のうち、H2B(2698処方、72万5762円)、PPI(1525処方、74万3769円)と注射投与が大部分(88.7%)を占め、内服処方は、539処方だった。実質患者数は1796症例であった。そのうち、大部分の症例(N=1383)は、ICU滞在期間中の全ての処方が注射剤であり、注射剤から内服薬へと切り替えられたのは、わずか302症例であった。消化管出血を認めたと思われた症例は13例(0.7%)であった。結論当院のおける上部消化管出血症例は、海外で報告されている頻度(4%)より遙かに少ない(0.7%)という結果を得たが、今回の調査は、処方箋を用いたスクリーニング的調査であり、経静脈的投与法、ルーチン投与法が予防効果において優れているという結論を導くのは危険と考えた。ルーチン投与に関しては、ハイリスク患者の選別を行う、人的、時間的余裕が無いことから変更は難しいと思われたが、投与法の変更に関しては、仮に経静脈的処方の全てが経口投与処方に切り替えられた場合のコスト削減は、年間100万円以上になることから、経口投与法の予防効果の確実性が確認されるならば、行う価値があると考えられた。