[O31-7] 当院で経験した遅発性先天性横隔膜ヘルニアの2例
【背景】先天性横隔膜ヘルニアの発生頻度は出生児2500人に1人である。遅発性先天性横隔膜へルニアは生後30日以降に診断される先天性横隔膜ヘルニアをいい、その頻度は約10%である。遅発性先天性横隔膜ヘルニアは新生児期発症例と比較しても良好な経過をたどることが多く、治療への反応は良好とされているが、初期症状は多彩で診断や対応の遅れにより致死的となりうる。【目的】多彩な症状を呈する遅発性先天性横隔膜へルニアの中で、今回、早期に診断でき救命できた2例を経験したので報告する。【臨床経過】症例1は生後4ヶ月の男児である。哺乳不良と呼吸困難を主訴に来院した。肺音は左中下肺野で減弱、腹部も陥凹しており、胸部レントゲン検査で当疾患を疑われた。症例2は生後7ヶ月の男児。不機嫌・嘔吐で受診され、腹部超音波検査で腸重積症を疑われ高圧浣腸を実施されたが、その際横隔膜を超えて胸郭内に逸脱する腸管を認め、当疾患を疑われた。【考察】生後24時間以内に発症する先天性横隔膜ヘルニアでは呼吸器症状で発症する事がほとんどであるが、遅発性先天性横隔膜へルニアでは呼吸器症状よりも消化器症状から発症することが少なくない。今回、症例2では腸重積症を疑い高圧浣腸を行う際に診断する事ができたが、高圧浣腸を行うことで腸穿孔、造影剤漏出による腹膜炎のリスクが上昇する。処置を継続した際には十分状態の急変もありえた症例であった。聴診などの入念な身体所見、胸腹部レントゲン写真で当疾患の診断は可能である。【結語】遅発性先天性横隔膜ヘルニアは初期症状として多彩な症状を呈し特異的なものはないため、常に念頭においておく必要のある疾患である。