[O32-6] マウス志賀毒素投与モデルにおける尿細管間質障害の組織学的検討
【背景】腸管出血性大腸菌感染に伴う溶血性尿毒症性症候群(STEC-HUS)は集中治療を要する重篤な疾患であるが現在のところ治療法は対症的なものが主である。急性期を離脱後も10-20%は慢性腎機能障害に移行すると報告されている。我々は動物モデルを用いて本疾患の病態解明を目指しており、志賀毒素を投与したマウスにおいて尿細管機能が低下することを過去に報告した(第45回日本集中治療医学会学術集会)。【目的】さらなる病態解明をすすめることを目的とし、STEC-HUSマウスモデルにおける腎臓の組織学的所見を検証した。【方法】野生型マウスに志賀毒素を腹腔内投与(200pg/g)し、STEC-HUSモデルを作成した(Stx群)。志賀毒素投与より6週間後に腎組織の採取した。採取した腎に対しPAS染色と抗CD10抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、Stx群とコントロール群で比較を行った。【結果】Stx群マウスの腎ではPAS染色で遠位尿細管直部にPAS陽性硝子円柱が認められた。抗CD10抗体を用いた免疫組織化学染色ではCD10陰性である遠位尿細管に円柱を認めた。コントロール群マウスの腎ではこれらの所見を認めなかった。【結語】志賀毒素を投与されたマウスでは遠位尿細管に組織学的な障害が認められた。この所見は過去に報告した本マウスモデルにおける再吸収能低下を裏付ける所見であると考えられる。STEC-HUSの病態において遠位尿細管が障害されている可能性が示唆された。