第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

腎 研究

[O33] 一般演題・口演33
腎 研究02

2019年3月1日(金) 16:40 〜 17:30 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:今泉 均(東京医科大学麻酔科学分野・集中治療部)

[O33-1] point-of-care 血液ガス測定器による頻回のクレアチンモニタリングが急性腎傷害の早期発見に与える影響

高折 佳央梨1, 内野 滋彦2, 瀧浪 將典2 (1.淀川キリスト教病院 腎臓内科, 2.東京慈恵会医科大学附属病院 麻酔科学講座 集中治療部)

【背景】重症患者において急性腎傷害(AKI)の早期発見は必要不可欠である。AKIの診断にはクレアチニン基準と尿量基準から成るKDIGO定義が用いられることが多い。クレアチニンは通常多くても1日に1回しか測定されないが、point-of-care(POC)血液ガス測定器を用いるとより頻回にクレアチニンを測定することができ、より迅速にAKIを診断し治療介入できる可能性がある。【目的】(1) POC血液ガス測定器によるクレアチニン値が中央検査室で測定するクレアチニン値と比較して正確であるか、(2) 血液ガスによるクレアチニンと尿量を用いたAKIのKDIGO定義 (KD-BG) が、従来の中央検査によるクレアチニンと尿量を用いたKDIGO定義 (KD-lab) と同様に使用可能かどうか、(3) 頻回のクレアチニンモニタリングがAKIの早期発見に有用かどうかを検証する。【方法】2016年10月から2017年9月に当院ICUに24時間以上滞在した398名の患者を対象とした単施設後ろ向き観察研究。毎朝同時に採取される検体(n=1258ペア)を用いて血液ガスと中央検査のクレアチニン値を線形回帰分析、Bland-Altman分析を用いて比較した。KD-BG定義とKD-lab定義でのAKI発症率、病院死亡率、AKIと診断されるまでの時間を比較した。統計解析はSPSS 19.0 softwareを使用しp<0.05を有意とした。【結果】POC血液ガスクレアチニン値は中央検査のクレアチニン値と良く相関した(R2 = 0.99, p<0.001)。398名のうち241名がKD-BG定義でAKIと診断され、KD-lab定義よりも6.3%多かった(60.6% vs. 54.3%)。またKD-BG定義でのみAKIと診断された人は26人いて、15.4%死亡した一方でKD-lab定義でのみAKIと診断された人は1人のみで死亡しなかった。KD-BG定義はKD-lab定義に比べて3.1時間AKIを早期に診断した(13.5時間 vs. 16.6時間, p<0.001)。【結論】POC血液ガス測定器によるクレアチニン値は中央検査室で測定するクレアチニン値と良く相関する。血液ガスによるクレアチニン値と尿量を用いたKDIGO定義は臨床的に有用で予後予測能を有する。POC血液ガス測定器による頻回のクレアチニンモニタリングによりAKIをより早期に発見することができる。POC血液ガス測定器はベッドサイドでの迅速な診断、頻回のフォローアップを行えることから、ICUにおいて血液ガスのクレアチニン値をモニタリングすることは有用である。