[O34-1] 救命し得た劇症型心筋炎の一例
【背景】急性心筋炎は,主にウイルス感染症により心筋に炎症をきたす疾患であり,感冒症状などの軽症にとどまるものから,心原性ショックとなり,大動脈バルーンパンピング(IABP)や心肺補助装置(PCPS)を必要とする劇症型心筋炎まで病態は多彩である.今回,アレルギーにより劇症型心筋炎となった症例に対して集学的治療を行い救命できた症例を報告する.【臨床経過】77歳女性.3日間全身倦怠感と発熱が持続し前医を受診した.血圧低下と胸部レントゲンで心拡大を認めたため,同日当院循環器内科へ紹介となった.来院時,低血圧(84/68mmHg)があり,心臓超音波検査で前壁に心嚢液貯留を認め,心タンポナーデと診断した.血液検査ではBNP 665.2pg/mlであったが,胸部CTや心臓カテーテル検査で原疾患は判明せず,心嚢ドレナージを行い循環器病棟に入院となった.第2病日に突然VT様波形が出現してそのままCPAとなった.気管内挿管などの蘇生処置後,ノルアドレナリン,ドパミンなどの循環作動薬への反応が乏しかったため,大腿動静脈よりPCPSを導入し,IABPおよび経静脈的ペースメーカーを留置しICU入室となった.入院時の血液検査では白血球分画は正常であったが,第3病日に行った心筋生検では好酸球の浸潤を認め,劇症型の好酸球性心筋炎と診断し,第4病日より3日間mPSL 1000mg/dayのステロイドパルス療法を行った.ステロイド投与により心機能は劇的に改善し, 4日後にPCPSを離脱することができた.その後,第8病日にIABPを抜去し,第9病日にはカテコラミン投与を終了,第10病日に呼吸器を離脱した.第14病日にICUを退室,第30病日にリハビリ目的に転院となった.【結論】劇症型心筋炎は,発症初期のうちに体外循環補助が必要な重症度に陥るものと定義され,約半数が死亡するといわれている.好酸球性心筋炎はステロイドパルス療法が効果的な場合もあるが,劇症化するとやはり予後不良となりえる.本症例では高齢の患者の劇症型心筋炎に対してPCPS,IABP,ステロイドパルス療法を中心とした集学的治療にて救命し得た.