[O34-2] 奇異性脳塞栓と肺塞栓を同時発症し、卵円孔に陥頓血栓を認めた一例
【背景】卵円孔への血栓陥頓は静脈血栓塞栓症の稀な合併症であり、更なる動静脈塞栓症を起こし致命的となりうる状態である。本病態への治療法に関しては、抗凝固療法、血栓溶解療法、外科的治療のいずれを優先するべきか一定の見解が得られていない。今回、我々は奇異性脳塞栓と肺塞栓を同時発症し、脳血管内治療後に緊急心嚢内血栓除去術を行い救命に成功した一例を経験したので報告する。【臨床経過】71才、男性。歩行中に呼吸困難感を自覚、路上で動けなくなり救急要請された。来院時SpO2低下、頻脈に加え左上下肢の完全麻痺を認めた。経胸壁心エコーでは右心負荷所見、両心房にひも状の構造物を認め、経食道心エコーでは卵円孔への血栓陥頓を認めた。頭部CTでは明らかな病変を認めず、体幹造影CTでは両側肺動脈に血栓像を認め、さらに脾梗塞像を認めた。頭部MRIでは側頭葉、基底核に淡い高吸収域を認め、MRAでは右内頸動脈の閉塞像を認めた。以上より奇異性脳塞栓、脾塞栓、肺塞栓、卵円孔への血栓陥頓と診断した。陥頓血栓が大きく追加塞栓にて致死的となる可能性が高く外科的治療が優先されると考えられたため、t-PA投与は行わず脳血管内治療で3.5cmの血栓を回収し、再灌流を確認した。その後心嚢内血栓除去術、卵円孔閉鎖術を施行し、13cmの血栓を摘除した。術後、動静脈塞栓症の再発は認められず経過した。【結論】卵円孔への血栓陥頓に対して血栓溶解療法を施行された群では追加塞栓による死亡率が高い可能性が報告されている。奇異性脳塞栓を併発した卵円孔への血栓陥頓に対しては、血栓溶解療法を行わず脳血管内治療を行い、その後に心嚢内血栓除去術を行う治療戦略が有効な可能性がある。