[O35-1] ニトログリセリン負荷試験により診断に至った左室流出路狭窄増悪による心原性失神の1例
【症例】74歳女性【主訴】失神【既往歴】高血圧症、関節リウマチ(関節変形・可動域制限で複数回の転倒歴・骨折歴あり)、狭心症(前下行枝#7に経皮的血管形成術)、複数回の失神歴あり(食事中1回、排尿時2回、歩行時1回)【使用薬】アムロジピン 7.5mg/日、PSL 3mg/日、MTX 8mg/週、ゴリムマブ 50mg/月、サラゾスルファピリジン 1000mg/日、バイアスピリン 100mg/日、クロピドグレル 75mg/日【現病歴】以前から安静時心エコーでS状心室中隔と収縮期僧帽弁前方運動を指摘されているが有意な左室流出路狭窄なく経過観察中だった。来院当日16時40分頃、家人に手を引かれて歩行中に意識消失した。尿失禁と全身の強直間代性けいれん出現したため救急要請、当院へ搬送。【経過】来院時意識清明で、心尖部で収縮期雑音を聴取した。細胞外液輸液開始後、収縮期雑音は消失した。12誘導心電図は正常洞調律で有意所見を認めなかった。エコーでは左室収縮は良好で明らかな壁運動低下は認めず、左室流出路圧較差は13.2mmHgで以前と著変はなかった。IVCは虚脱し血管内容量低下が示唆された。入院後に再施行した心エコー検査では左室流出路圧較差は15.4mmHgであったが、ニトログリセリン負荷後に最大69mmHgまで圧較差増大を認め、前胸部絞扼感も出現した。脱水を契機に左室流出路狭窄を来たし失神に至ったと推測され、カルシウム拮抗薬を減量しβ遮断薬を導入した。症状再燃なく、リハビリ目的に第23病日転院。【考察】 本例では複数回の失神歴があり、いずれも神経調節性失神が考えられる経過であった。しかし歩行中の失神も生じており、来院時聴取された収縮期雑音が輸液負荷後に消失した経過から心原性失神が疑われた。本例は元々S状心室中隔を指摘されており、関節リウマチ・骨折等の疼痛で飲水行動が十分とれず、脱水を契機に左室流出路狭窄から失神に至ったと思われた。 ニトログリセリン負荷は前負荷を低下させ、左室内血管容量低下を再現する試験であり、本例の様な前負荷低下の関与が疑われる失神症例では有用な試験である。【結語】 失神の原因は様々であり、原因によって治療方針が異なる。本例はニトログリセリン負荷が診断に有用であった1例であった。