第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

循環 症例

[O35] 一般演題・口演35
循環 症例02

Fri. Mar 1, 2019 10:00 AM - 11:00 AM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:畠山 登(愛知医科大学)

[O35-2] 多職種の連携により、冠動脈パイパス手術後の冠動脈スパスムを救命しえた一例

川上 勝弘1, 北川原 康子1, 長田 洋平1, 佐藤 貴久2, 中原 孝3, 小林 隆洋4, 清水 祐5, 町田 維明5, 成田 昌広1, 瀬戸 達一郎6 (1.長野市民病院 麻酔科, 2.長野市民病院 救急科, 3.長野市民病院 心臓血管外科, 4.長野市民病院 循環器内科, 5.長野市民病院 集中治療部, 6.信州大学医学部 心臓血管外科)

【背景】冠動脈バイパス手術後の冠動脈スパスム(refractory coronary spasm; RCS)の発生率は0.4%と稀であるが、死亡率は高い(Lorusso.2012)。我々は心拍動下のバイパス手術(OPCAB)直後にRCSを生じたものの、様々な診療部門の協力で救命しえた一例を、過去の文献を踏まえ報告する。【臨床経過】70代男性。既往は高血圧、胆嚢摘除後、そして前立腺癌術後の放射線照射である。3か月前から夜間の呼吸苦があり救急外来を受診した。後日の冠動脈造影で前下行枝近位の100%閉塞が指摘された。入院後経過:OPCAB(左内胸動脈-前下行枝吻合)を終えICU到着直後、血圧低下と心停止が生じた。再開胸し、右大腿動脈送血-右房脱血によるPCPS(2.4L/min/m2)を開始した。手術室に移動し右房脱血から左大腿静脈脱血のPCPSに乗せ換え、血管修復・止血術、IABP挿入を行った。再手術直後の冠動脈造影では3枝のRCSであり、冠動脈へのニトログリセリン・ニトロプルシド投与に僅かに反応する程度であったが、3日後の再検査ではRCSは解消し、EFは20-30%に改善した。放射線治療後の脆弱な腸管の虚血による下血と、炎症反応の上昇があり、術後4日に消化器内科医が内視鏡的アルゴンプラズマ凝固術を施行し、引き続き腎臓内科医によりCHDFが開始され、徐々に心機能は改善した。手術室で全身麻酔下に、PCPS抜去(7日)とIABP抜去(11日)を行い、術後17日に抜管した。術後21日にはカテコラミンが終了でき、術後30日にICU退室となった。【結論】冠動脈バイパス手術後のRCSは様々な要因で起こりうると考えられている。カテコラミンの多量投与では対応が困難で、侵襲的な循環補助(IABP,PCPS,あるいはECMO)、冠動脈造影による診断確定、そして血管拡張薬の冠動脈内投与や全身投与が、速やかに行われなくてはならない。RCSの治療には、適切な介入と多くのスタッフの尽力が必要である。